無実の罪で送られた児童キャンプで、人格形成のためひたすら穴を掘り続けさせられる――という設定こそとっぴなものの、アクの強いクセ者小説ではなく、これは王道の児童文学でした。
〈脇の下〉〈X線〉〈ジグザグ〉〈ゼロ〉といった個性的なあだ名(?)を持つ、一癖も二癖もある同居者たちと、うまくやったり喧嘩したり。体育会系の教官もいれば、教員タイプの教官もいて、それを束ねるのはサディストの女所長。
水の干上がった元湖でひたすら穴を掘らされるのには、どうやら何か目的があるらしい……というその因縁が現在パートと交互に語られてゆくのですが、この過去パートが実にいい。いかにもアメリカ的ホラ話というか……。
現在パートの方だと、やはり後半に入ってからの冒険シーンの方がわくわくしてしまうのだけれど、現実社会の縮図みたいな前半部分も悪くない。みんな一丁前に日和見のすべを身につけてるなぁ(^^)。
あり得ないニックネームとか、野球選手スウィート・フィートの靴と足とか、タマネギの扱いとか、ふざけたセンスのよさが全編を覆っていてそれだけでも楽しい。
しかし。いい作品だけど、訳者と解説者はちと誉めすぎの気が。ご都合主義の物語が幅を利かせているなかにあっては素晴らしい完成度だが、このくらいは水準であってほしい。よくできたエンターテインメントでした。
『Holes』Louis sachar,1998年。
無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放りこまれたスタンリー。かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。ある日とうとう決死の脱出。友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」をめざして、穴の向こうへ踏み出した。(裏表紙あらすじより)
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