『若い荒地』田村隆一(講談社文芸文庫)★★★☆☆

 田村隆一による、黎明期の日本現代詩思い出話。けっこう真面目な回想というか、エッセイに見られるような気のいいアンちゃん的な親しみやすい雰囲気は少ない。当時はまだ一介の同人だった大詩人たちの若書きが収録されているのが楽しい。もちろん田村自身の詩も収録されている。

 「鏡のようにヌツと入つて来ては/ボクを殺した/それは勿論/無意識の世界ではあるが」とか「果実がみのるまで/静寂な黙殺があつた」とかいうあたりに片鱗が窺えないこともないと思う。

 ただし田村自身の詩も含めて、さすがに初期の詩はほとんど足穂をショボクさせてロマンチシズムを垂らしたような作品である。時に田村氏17歳。通して読めば詩人たちの成長過程も味わえる。

 海軍は陸軍より居心地がいいとかいう対談が面白かった。
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