『火蛾』古泉迦十(講談社ノベルス)★★★☆☆

 たぶん期待値が高すぎたのだろう。

 思ったほどじゃなかったな、という感想。

 宗教ミステリや思想ミステリ自体は、今や星の数ほどとは言わないまでもけっこう書かれていて、本書はイスラム世界が珍しいとはいえ、類書と比べても標準作。

 よくできてはいるけれど、ミステリとしての驚きはない。

 例えば本書と同じような形で、カトリックミステリ、真言宗ミステリ、ヒンドゥー教ミステリ……といくらでも書けそう。「書けそう」とは言ってももちろん、書けるだけの知識と技術があってのことなのだが。そういう意味で「よくできてる」。

 だけど、ミステリならでは!という興奮や驚きは薄かったなあ。

 十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のため、アリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕《あら》わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山の、閉ざされた穹廬《きゅうろ》の中で起きた殺人だった。未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する、第十七回メフィスト賞受賞作。(カバー袖あらすじより)
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