『苦いオードブル』レックス・スタウト/矢沢聖子訳(ポケミス1797)★★★☆☆

 『Bad for Business』Rex Stout,1940年。

 スタウト作品の魅力と言えば、アーチーとウルフのキャラクター。それに尽きます。

 ところがなぜか、『手袋の中の手』『苦いオードブル』と、二作続けてポケミスからは非ウルフものが刊行されました。

 感想はというと、微妙……かな。

 ドル・ボナーもの『手袋の中の手』は、女探偵ものと本格ミステリのミスマッチがこれまた微妙だった。本書の探偵テカムス・フォックスはというと、残念ながら帯にあるような「ネロ・ウルフの好敵手」「もうひとりの名探偵」というほどの器ではない。

 ノリから言ってもアーチーがウルフに黙って出しゃばってる感じがして、それはそれでアーチーだと思って読めば応援したくなってくるんだけど、やっぱりアーチー&ウルフって、動と静、陽と陰、コントラストあってこその魅力だと思うのです。そんなわけなので、いわばアーチーの一人ぼっち探偵な本書はもの足りない。

 しかもこのフォックスという探偵、秘密裡に聞かされた情報を平気で当事者にばらしたりするので、こんなんで探偵としてやってけるんだろうかとチト不思議。

 ゲスト出演のドル・ボナーもまるで別人です。残念(;´д` )。

 ミステリとしては、もともとスタウトは高峰がなくって平均点をぽこぽこ打ち出すタイプなので、その例に漏れずまずまずの出来が楽しめる。

 老舗食品会社は揺れに揺れていた。看板商品である瓶詰オードブルへのキニーネ混入事件が続いたのだ。苦くて食べられない製品に、評判はがた落ち。しかもその騒動のさなか、今度は社長が殺される。第一発見者は、キニーネの件を調査していたエイミー。女性探偵ドル・ボナーの事務所で働く新人の彼女は、あまりの事態に動転し、偶然知り合ったテカムス・フォックスに助けを求めた。名探偵として鳴らすフォックスは、彼女を窮地から救うべく、ニューヨーク中を駆けまわる。巨匠スタウトが生んだもうひとりの名探偵、テカムス・フォックス颯爽登場。(裏表紙あらすじより)
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