おや。と思ったら、11月号でも日本作家特集をやってました。でもまあ円城塔・伊藤計劃・平山瑞穂ときたら、樺山三英もやらないわけにはいかないでしょう。というか11月号の方が臨時特集で、基本は2月号が日本作家特集……ですよね。
「My Favorite SF」(第26回)山本弘
「思考の谺」ジョン・ブラナー(『SFマガジン』1970年6月号)。また入手しづらいものを……。
「SFマガジン読者賞発表」
日本作品は伊藤計劃「Indifference Engine」、海外作品はイアン・マクドナルド「ジンの花嫁」、イラストは佳嶋。それぞれのコメントつき(「ジン」は訳者の)。
「Second Lifeの可能性を探る」
Second Lifeを利用している飛浩隆・円城塔のコメント掲載。
ここから日本作家特集。
「アリスの心臓」海猫沢めろん ★★★☆☆
――高次元が自然界に存在しているという発見は、期せずして並行宇宙や異次元の存在の裏付けとなってしまった。……というわけで。また明日(ぽこぽこ)。ちっす! よろしくー!
う〜ん。。。袋綴じ(開封済み)小説とか、タイポグラフィックな字面とかは面白かったんだけどな。たぶんわざとなんだろうけれど、妙にオリジナリティあふれる比喩とか、わざと噛み合わないのを狙ってるようなシュール(風味)のギャグとかは苦手だなあ。わたしの場合、キャラ萌えなんかはOKなんだけど、こういうわざとはずした文章には拒否反応を起こしてしまう。スベるのが怖くてストレートにギャグも書けないなんて。
「一九八四年」樺山三英 ★★★★☆
――一九八四年を探して、きみはその町にたどり着く。古ぼけたガイド・ブックを開いて、読み上げる。町に入る方法なら、いくつかある。陸路で、空路で、あるいは海路で。いろいろな意味で、その町はバルセロナによく似ている。
『一九八四年』探しの旅は、オーウェル/自分探しの旅として再構築されることになる。少なくともあまりスペインに詳しくないわたしのような人間にとっては、カタロニア讃歌とサグラダ・ファミリアの結びつきは必然に思えてしまうのだが。
「夕暮れ畑」谷崎由依 ★★★★☆
――ヒナタさんが、帰ってきたよ。「働いてたみたいよ。あれね……運び屋っていうの」「ヒナタさんが」「そんな雰囲気だったけど」ユナコはただひとりの友人だった。だけど彼女は、笑わない。わたしといるときはけして笑わない。
円城塔氏とともに文学界新人賞を受賞した方です。選考委員の川上弘美氏に「わたしの小説とちょっと似ていません?」と書かれていましたが、やっぱり似てるんですよねえ。「秘密です」「秘密」「教えられませんよ、そんなこと」「でも、よく戻ってきましたね」とかの会話のテンポとかもうそっくりです。でも川上弘美より理屈っぽい分SF寄りかな?
「『日本SF全集・総解説』刊行記念座談会」鏡明・牧眞司・日下三蔵
いや話が尽きませんね。現在では鏡明氏の『不確定世界の探偵物語』も復刊されましたし。
「《異形作家コレクション》10周年記念 井上雅彦インタビュウ」
主にショート・ショート集『ひとにぎりの異形』についてです。
「SFまで100000光年 53 かっとばせオリゼー」水玉螢之丞
「結晶の降る世界」新井ユキコ《SF Magazine Gallary 第26回》
「『アイ・アム・レジェンド』誌上公開」
ウィル・スミスとフランシス・ローレンス監督インタビュウ。ニューヨークのメインストリートを実際に無人にして撮影した、とかって、すごいことやるなあ。
「SF BOOK SCOPE」林哲矢・千街晶之・牧眞司・長山靖生・他
◆ほんとにねえ、古典新訳文庫から『幼年期の終わり』が出るとは思わなかったですよ。その他『ラナーク』、スタージョン『ウィジェット〜』、『ナツメグの味』など。
◆『新しい太陽系』は昨今珍しく、新書らしい新書のようです。その名の通り、太陽系に関する新しい科学的知識入門。
「小角の城 15」夢枕獏
「地球発熱衰弱状態」椎名誠《椎名誠のニュートラル・コーナー06》
たとえ嘘でも真でも、中国なら何でもありだろうなあと思わせてしまう妙な(間違った方向の)説得力がある。
『怨讐星域』第六話「エデンの防人」梶尾真治/加藤龍勇イラスト
――タツキは今日が初めてのレイバーデイだ。これから行くのはコミュを“人喰い”から守る場所だ。防人の役目はその“人喰い”がエデンに侵入してこないように境で見張っておくということだ。
いよいよ連載再開。いつのまにやら世代は進み……こんなことになってましたか。なるべくしてなったというか、そんなものです。
「大森望のSF観光局」14 新・世界SF全集を立ち上げる
さらりと一覧を作ってしまうところがマニアだあ(^^;。
「デッド・フューチャーRemix」(第68回)永瀬唯【第12章 ハイ・フロンティア】
ん。なんだなんだ。ドグラ・マグラはどうなった。フツーに第12章第1回になっとるぞ。今回は宇宙植民島、スペース・コロニーについて。
「サはサイエンスのサ」156 鹿野司
「風雲急を告げるiPS細胞 その1」ってことですが……風雲急を告げすぎだよ! いくら科学は日進月歩だからって何なんだそのペースの新発表は。競争し合って役立つものができればそれに越したことはないんですが。
「家・街・人の科学技術 14」米田裕
ブルーレイディスク、保護層0.1mmって、傷がついたら終わりじゃないの?って思ったのだけれど、どうなんだろう。PS3が盛り返してきたみたいなんで、これからそこらへんがクロースアップされてきだすのかな。
「付け髭サンタ」伊藤優子《リーダーズ・ストーリイ》
いかんな。こういうファンタジーを読んでもタイムパラドックスがうんたらかんたらとか考えるようになってしまって素直に楽しめない。わたしはどちらかというとアバウトな読者のはずだったのに。
「ゼロ年代の想像力 「失われた十年」の向こう側 08」宇野常寛
番外篇って書いてある。高橋留美子について。
「三〇〇万」小林泰三
「雪風が飛ぶ空」(戦闘妖精・雪風 第3部)神林長平
-------------
『SFマガジン』2008年2月号
オンライン書店bk1で詳細を見る。
amazon.co.jp で詳細を見る。