『エトロフの恋 無限カノン3』島田雅彦(新潮文庫)★★★★☆

 ついに完結編。恋の〈その後〉を描く――とは言ってももちろん、恋は終わってはいない。

 けれど表面上は、ぷつんと途切れてしまっています。カヲルの一人称による、カヲルだけの物語。これまでの登場人物はほとんど登場しない。出てくるのはカヲルが暮らす択捉島の住人たち。描かれるのは択捉の生活。

 源氏物語が恋愛小説で、古事記日本書紀が歴史なら、これはシャーマンの一族によって予言/預言された新たな恋の黙示なのだ。

 てゆうか、恋って自由なものなのだというのは、本当なら当たり前のことなのにね。声と性能力を同時に失うと、カヲルですら迷うのだ。

 そこは、困難な恋を戦った者を待ち受ける約束の地なのか。不二子をうしない、天賦の美声も奪われたカヲルは、生ける死者として最果ての島にたどり着く。すべてが終わったかにみえた刹那、奇蹟の恋はカヲルの前に最後の扉を開いた……。百年四代にわたる恋の遺伝子の行方を、日本近代史のなかに描く史上最強の恋愛三部作「無限カノン」。恋に倦んだ大人たちを挑発しながら堂々の完結へ!(裏表紙あらすじより)
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