思ってた以上に面白かった。『幻想文学』からの転載も多いんだけど、未収録作品のほか、対談(三浦しをん×本多正一、戸川安宣×東雅夫、皆川博子×津原泰水)も豪華でした。
「棘」塔晶夫。直筆の詩。
緑川弓雄名義の「屋漏」にはびっくり。昭和の市井ものだ。夫婦文学だ。意外だなあ。
「朝ごはん」は同性愛者がぴーちくしゃべるだけの話。頭のなかでおすぎやピーコに吹き替えましょう。
「人魚姫」塔晶夫名義のショート・ショート。他愛がないといえば他愛がないのだけれど、ようやく〈中井英夫〉という作家に期待している雰囲気が現われてきました。ただの女学校がどことなく淫靡な雰囲気に。
「青みどろ」。これも塔晶夫名義の掌編。眩暈感がすばらしい。炎天の浅草で演じられる、からくり仕掛けと完全犯罪。
「草の沈黙」。ここからは中井英夫名義。流星に射たれて恋と死に目覚める男の耽美譚。
「少女密偵団殿」。角書きに「新編雑記風幻覚小説」とあるけれど、こういうのが中井英夫はうまいです(澁澤に比べてもだいぶうまい)。『アリス』あたりを思わせる瑞々しい現実/空想から始まる冒頭などさすが。ハネギウス一世もの、完成させてほしかったな。
「少年とカメレオンの話」はエッセイ。
三浦しをんは作家代表というよりもファン代表、戸川安宣・東雅夫は編集社代表、皆川博子・津原泰水は作家代表という感じの対談でした。
ほかに塚本邦雄や須永朝彦、歌人の東直子のエッセイ、ほか評論など。
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