何よりもこれが戯曲だということに驚きました。映画のシナリオとかじゃないんだものなあ。「読んで」いるだけじゃあわかりづらいけれど、初めて舞台で実際に見た人たちはびっくりしただろうなあ。いや逆にこれは見るより読む方が適しているかも。町とか家とか背景がころころ変わるたびに、頭のなかに想像上の家庭や町並みを思い描きながら読んでしまいました。
何ていうか、それこそ日常のワンシーンみたいな景色だから、映画とか何かで見慣れた風景をそのまま流用して頭に思い浮かべる――いや思い浮かんじゃうのです。これはすごい。セリフだけで風景が立ってくるというのは、ほんとただごとではないすごさだと思う。否定的に言えばステレオタイプってことなのかもしれないけど。
内容なんて二の次ですね。何よりもこの世界構築力がすばらしい。
ニューハンプシャー州の小さな町に暮らすエミリーとジョージ。ふたりは善良な両親と近隣の人々に見守られて育ち、恋に落ちて、やがて結婚の日を迎えた。しかし幸せに満ちた九年の夫婦生活の後、エミリーの身には……。人の一生を超越する時の流れのなかで、市民たちのリアルな生の断片を巧みに描きだし、ありふれた日常生活のかけがえのない価値を問う。演劇界に燦然たる足跡を残した巨匠の代表作。ピュリッツァー賞受賞(裏表紙あらすじより)。
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