『S-Fマガジン』2008年6月号No.626【アーサー・C・クラーク追悼特集1】★★★☆☆

 編集長も書かれてますが、レム、ヴォネガットにつづいてクラーク追悼特集となりました。ほかの二人と比べると「SFバカ」度が高い(「ハードSF」であるというのとはまた違う。主流文学ではなくSFでしかあり得ないとでもいうか)ので、超がつくほどのSF者ではないわたしとしては、あまり実感がわかない。というより、すでにコナン・ドイルとかH・G・ウェルズと同じ歴史上の偉人のように感じていたからかもしれない。

アーサー・C・クラーク エッセイ・セレクション」中村融
「貴機は着陸降下進路に乗っている――と思う/ベツレヘムの星/グレート・リーフ」(You're on the Glide Path,I Think/The Star of Bethlehem/The Great Reef,Arthur C. Clarke,1949,1954,1962)
 監修者解説を読めば、どのエッセイも作品と密接なかかわりのあることはわかるのだが、単独の文章として読むなら、ベツレヘムの星とはどんな科学現象だったのかを考察する「ベツレヘムの星」がいちばん読みやすかった。
 

「追悼エッセイ」浅倉久志柴野拓美秋山完小川一水梶尾真治北野勇作機本伸司・草上仁・小林泰三笹本祐一菅浩江高千穂遙谷甲州西島大介野尻抱介長谷敏司林譲治平谷美樹山本弘
 執筆陣は豪華だけれど、エッセイでお茶を濁す(?)というのは『S-Fマガジン』にしては珍しい。さすがに頓珍漢な人に執筆依頼はしていないけど。急だったので間に合わなかったんだろうな。評論や資料などは次号に予定しているようです。なかでは草上仁と野尻抱介によるハードSFとしての魅力、山本弘によるオカルトを「信じてはいないけれど楽しんでいる」というスタンスについての言及、がよかった。
 

「時のこどもたち」スティーヴン・バクスター内田昌之(The Children of Time,Stephen Baxter,2005)★★★☆☆
 ――ジャールは、地平線に見える氷にずっと心を惹かれていた。一日が終わりを迎え、広大な夕焼けが空を染めていた。見慣れないものがあった。すべすべした石の畝だ。北の大地は、長方形の遺跡でびっしりと覆われていた。

 新作『太陽の盾』共作者。文明が崩壊した地球の未来をざっくりシミュレーション&ほんのり抒情がまぶされた、壮大なんだけど地味な(地味なんだけど壮大な)作品。良くも悪くも人間中心、だからこそ感動的?
 

スティーヴン・バクスターアーサー・C・クラーク卿の会話」中村融
 クラーク追悼特集はここまで。
 

「My Favorite SF」(第30回)吉村萬壱

「ついにヴェールを脱ぐ超大作『深海のYrr』」
 

「愛の新世界」樺山三英 ★★★☆☆
 ――繁華街を抜け、陸橋を渡ってしまえば、そこはもう愛の新世界。そこがどれくらい巨大であるかは、誰にも言い当てることができないのだった。「ようこそ、ホテル愛の新世界へ!」

 世界現代文学みたいなノリの作品。そこがかえって物足りない。
 

「SFまで100000光年 57 ゴジラの生息地」水玉螢之丞

「SEACHING DOWN THE RIDGE」Kenichiro Tomiyasu《SF Magazine Gallary 第30回》
 

「SF BOOK SCOPE」
笹公人『抒情の奇妙な冒険』は、そのあまりなタイトルに、見ないふりしてスルーしてたんだけど、歌集なのか。ちょっと気になる。

◆ホラーからは幽ブックス『地獄』『飛騨の怪談』の二冊。
 

「小角の城 17」夢枕獏

「二十六万トンタンカーに満杯の糞」椎名誠椎名誠ニュートラル・コーナー08》
 今回はあんまり。。。
 

「消失点、暗黒の塔藤田直哉【第3回日本SF評論賞選考委員特別賞】
 前号の選評で高千穂遙が噛みついていた。高千穂氏は毒舌なので話半分に聞いていたのだけれど、同じくキングに興味のないわたしが読んでみたらやっぱり駄目だった。何でだろう? これ自体で独立していないというか、キング作品の解説にしかなっていないからかな。
 

「SF挿絵画家の系譜」(連載276 中山正美大橋博之

「サはサイエンスのサ」160 鹿野司
 日本国憲法を現状のままフル活用するという発想自体が、現実的というよりむしろSF的に思えてしまう。
 

「家・街・人の科学技術 18」米田裕「エアフレッシャー」

「センス・オブ・リアリティ」
◆「知能に至る病」金子隆一
◆「「うつ病」と「うつ」の境界」香山リカ

 

ゼロ年代の想像力 「失われた十年」の向こう側 12(最終回)」宇野常寛
 最終回ということでまとめでした。やっぱり「決断主義」まではうなずけるんだけど、「決断主義にどう抗うか?」から胡散臭くなってくる。現状分析というよりは、著者の考える進むべき未来像みたいな感じなんだろうか。
 

大森望のSF観光局」18 Rendezvous With Sir Arthur
 クラークにインタビューしたときの話です。自慢したがりのクラークが可笑しい(^_^;。
 

「デッド・フューチャーRemix」(第72回)永瀬唯間章 クラークと宇宙植民思想】
 

「MAGAZINE REVIEW」〈F&SF〉誌《2007.10/11〜2008.2》香月祥宏
 ダリル・グレゴリイ「無理(Unpossible)」のほか、宇宙船の荷物受け渡しAI「アニー」が語るトラブル「つりあい(Balancing Accounts)」ジェイムズ・L・カンビアス、「過去にさかのぼって、誰かに一冊だけ本を渡せるとしたら、誰に、どんな本を渡すか?」という問いかけで始まる新人アン・ミラー「回想(Retrospect)」などが面白そう。
 

「おまかせ!レスキュー」120 横山えいじ

イリュミナシオン」14 山田正紀
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