『文豪怪談傑作選 柳田國男集 幽冥談』柳田國男/東雅夫編(ちくま文庫)★★★☆☆

 柳田作品を文芸作品として評価する、というスタンスのもと、『遠野物語』がまるまんま収録されていたりするのだけれど、さすがに『遠野物語』など一部のものを除けば、ほとんどの作品を「文芸作品」と呼ぶのは無理があります。

 逆に文芸っぽいものほどつまらなかったな。論文の方が面白い。

 「山人の研究」は初めて読んだのだけれど、少なくとも現代に生きるわたしの感覚からすると、神話なんかに出てくる「先祖が神」とかいうのは単に神格化しているだけなのだと思っていたら、むしろ逆で、「古い時代には神と人間の区別が、そうはっきりとしていなかった」「高い位地の人には皆かみと云う名称が付いた」という指摘があって、真偽や是非はわからないなりに目から鱗でした。

 それと面白いのはやはり「怪談の研究」ですね。怪談の真偽だなんて、読者として楽しむ分には思ってもみない視点ですから。こういうところはやはり民俗学者さんです。

 怪談というか妖怪好きには『妖怪談義』という名著が別にありますし。
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