『Die Zukunft einer Illusion/Das un behagen in der Kultur/Der Mann Moses und die Monotheistische Religion』Sigmund Freud,1927、1930、1939年。
カップリングの妙です。
「幻想の未来」を読むと、宗教と心霊主義を同列に扱っていたり、例のごとく何でもかんでも精神分析に結びつけたり、細かいところで「なんだそりゃ」な部分がいくつもあります。
当時の文脈で書かれた部分もあるので、今となってはどうでもいいようなところもあって、全体的に散漫な印象が残ります。
大筋では面白いんだけれど、もっとカットして引き締めた方がいいのにな……なんて感じました。
それに答えるかのような文章が「文化への不満」と「人間モーセと一神教(抄)」です。もちろん別々の論文なので、完全にリンクしているわけではないのですが。
それぞれ文化について、宗教について、ピントをしぼって論じているので、「幻想の未来」と同じ著者の文章だとは思えないくらい面白い。
特に、一神教としてのユダヤ教が信仰されるまでの過程を、トラウマを援用して論ずるあたりは面白かった。10に10を足しても20にしかならないけど、10に10を掛けたら100になる(喩えになってないかな?)。用い方によって材料をなんぼでも活かす、これぞ評論の醍醐味という面白さでした。最後はちょっと感情的になっちゃって気がしたけど。
抑圧に抵抗しようとする人間の、自己破壊的な傾向に注目しながら、宗教のはたす役割を考察し、理性の力で宗教という神経症を治療すべきだと説く表題2論文と、一神教誕生の経緯を考察する「モーセと一神教(抄)」。後期を代表するアクチュアルな3つの論文を収録。(裏表紙あらすじより)
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『幻想の未来/文化への不満』
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