『知への賛歌 修道女フアナの手紙』ソル・フアナ/旦敬介訳(講談社古典新訳文庫)★★☆☆☆

 『Las Cartas y una Selecsión de Poemas de Sor Juana de la Cruz』Sor Juana Inés de la Cruz。

 スペイン語圏及びアメリカでは名高い17世紀メキシコの詩人、とのこと。

 だけど編集方針に釈然としない。

 詩がちょびっとだけで、あとは手紙と解説ってのは……?

 その解説を読めば、訳者の意図はわかるのだけれど。曰く当時の文芸は詩が全盛だった、曰く人間性よりも人工的技巧がもてはやされた時代だった、曰く富のない平民女性が作家になるには修道女になるしかなかった、曰く作品の多くは聖歌や祭礼歌、宮廷詩、韻文の宗教劇と寓意劇であり、散文フィクションは一つもない……云々。

 でも、ねえ……。日本ではほぼ無名に等しい詩人の本格的紹介が、書簡って……。

 当時が社会的制約の多い時代だったことはわかる。女性に厳しい時代だったこともわかる。――しかしそれを今読まされてどうしろっちゅうんじゃ! 300年前のおばさんの愚痴を聞かされても困るのだ。〈修道女〉のイメージ優先型の平板な訳文もとっつきづらい。

 肝心の詩の方も、ですね。よほどのことのないかぎり、詩は詩人もしくは詩心のある人に訳してもらいたいなあ。訳の文体と内容がフィットしていた82番の詩がよかった。

 詩こそが最高の文学だった17世紀末。ソル・フアナはそんな時代に世界で最も愛された詩人だ。美貌の修道女でありながら、恋愛や抑圧的な社会への抗議をテーマとした作品を残した。彼女の思想を明快に表現した詩と2通の手紙を、詳細な解説とともにまとめたわが国初の試み。(裏表紙あらすじより)
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