『1ドルの価値/賢者の贈り物』O・ヘンリー/芹澤恵訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

 すっかり「ちょっといい話」っぽいイメージのついてしまったO・ヘンリーだけど、今改めて紹介されれば異色短篇作家っぽくていいかもしれない。

 けれど訳者の意図はそういうことではなくて、ニューヨーク以外を舞台にした初期の知られざる作品を紹介しようということのようです。

 だけど残念ながら出来のいい作品はやはり有名なもののなかに多い。「多忙な株式仲買人のロマンス」「赤い族長の身代金」「しみったれた恋人(釣りそこねた恋人)」「甦った改心」「心と手」「ミス・マーサのパン(善女のパン)」「二十年後」「警官と賛美歌」「賢者の贈り物」など。

 知らなかった作品では、遺言で贈られた千ドルの使い道を考えあぐねる「千ドル」、とりわけバカバカしいオチの光る「伯爵と婚礼の客」新潮文庫の短篇集には未収録のものでは、ライバルも多い意中の人を何とか手に入れようとする「意中の人」、などが面白かったです。

 「甦った改心」の改心部分だけが印象に残っていたけれど、読み返してみるとその直前の一言がかっこいいなあ。

 アメリカの原風景とも呼べるかつての南部から、開拓期の荒々しさが残る西部、そして大都会ニューヨークへ――さまざまに物語の舞台を移しながら描かれた、O・ヘンリーの多才な作品群。20世紀初頭、アメリ大衆社会が勃興し、急激な変化を遂げていく姿を活写した、短編傑作選。(裏表紙あらすじより)
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