『The House of Numbers』Jack Finney,1956年。
『盗まれた街』の映画化に合わせて、おそらくは同じく映画化されているという理由で復刊されました。
登場人物表に書かれているのはたった五人。余計な説明はなし。アーニー・ジャーヴィスの「脱獄」という一点のみに絞った大胆な構成。
非常にミステリ的な発想ではあるものの脱獄自体は奇をてらったものではない。ただただ黙々と脱獄準備が描かれるだけなのだけれど、そこはフィニイなので何だかんだ言って読ませてしまいます。
それだけであれば、面白いなりにフィニイのなかでは水準作であるのだけれど、ゲーム的娯楽小説かと思われた物語に現実的楔を打ち込むことで生み出された驚きが、強烈なインパクトを残します。
ボートの先にオレンジ色の光が見えた。奇妙な建物を照らす、巨大な投光照明。そう、厳重な警備で知られるサンクエンティン刑務所だ。ベンは考えた。四日以内に兄を脱出させなければ。なんとしても……房内でアーニーは、ただ一つのセリフを頭の中で繰り返していた。このままでは処刑される。弟の手を借りて脱獄しなければ。なんとしても……脱獄不可能の巨大刑務所からの脱獄計画を描く、異色作家の奇想天外なサスペンス。(カバー後あらすじより)
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