『幻の下宿人』ローラン・トポール/榊原晃三訳(河出文庫)★★☆☆☆

 『Le locataire chimerique』Roland Topor,1964年。

 いかにもある種のフランス小説らしい、シチュエーションと理屈だけでだらだらと進んでゆくちょっと退屈な作品。ストーリーテリングや語り口で楽しませようっていう発想自体がないんでしょうね。

 おかしなことが起きたなら、それに対するリアクションというものがあるはずであって、大きく分ければ「常識的な対応・非常識な対応・無視する」のいずれかによって大まかな作風も決まると思うのだけれど。初登場時の反応からしてすでに主人公が普通の人間とは思えないものなあ。といって異常者の視点っていうわけでもないんだよな。他人に対して我関せずな、ごく当たり前のフランス人という感じではある。で、そのまま最後まで行ってしまう。ちょっと変な人が

 ちょっと変なままおかしなことに巻き込まれた感じ。

 漠然としたイメージ的には、サイコホラーでもブラックユーモアでも不条理小説でもなく、シュールレアリスムと呼ぶのが適切かな。

 主人公のトレルコフスキーは、なけなしの金をはたいて引越しをする。だが、そのアパートは地獄への入口だった! 男は次第に理性を失っていき、異常な行動を始める。もし、この世の中に悪意が存在していて、手の込んだ陰謀が実際に企てられているとしたら……。アイデンティティ喪失の恐怖を描いたフレンチ・サイコホラー。(裏表紙あらすじより)
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