パロディやパスティーシュではわりとロマンス方面ばかりが描かれるアイリーン・アドラーのことを、「犯罪においても声楽においても、一流の芸術家だよ」と評しているのがまず新鮮。アイルランド問題をからめているのも原典にはなかった視点。
でもいちばんの特徴は、何より装幀がいい! 鹿撃帽をかぶって飴かなんか加えた少年、半透明のカバー越しに見える手書きのロンドン地図、帯とカバー裏に描かれたイレギュラーズ7人+犬。
でも残念ながら〈少年探偵団〉ものじゃあないんですよねぇ……。せっかくの探偵団なのに、探偵団としては活躍しないんです。探偵仕事をするのは主に主人公の少年リアムだけで、ほかは顔見せ程度。
ホームズ+リアム(と父親)の物語でした。
エドワードという少年を登場させることで、リアムの物語に奥行は出ましたが、事件そのものからすると不必要な登場人物だったような……。
少年探偵もののわくわく感がなくなっちゃいましたもんね。
次作はぜひホームズの愛すべきキャラをもっと立てつつ少年探偵団ものにしてほしいなあ。
19世紀末、ロンドン。世間をにぎわせているのは、金持ちの邸宅ばかりを狙う怪盗・黒薔薇の賊だった。ロンドン警視庁も頼りにする名探偵シャーロック・ホームズの武器は、聡明な頭脳とベイカー街少年探偵団。個性豊かな少年探偵団の面々は、器用な手先や変装など、それぞれの特技を駆使し、次々と難事件に挑む敬愛するホームズを助けていく。「語られざる事件」をモチーフに、ホームズ譚の魅力がいま、新たに甦る。(カバー袖あらすじより)
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『キューピッドの涙盗難事件』
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