『冷たい校舎の時は止まる』(上・下)辻村深月(講談社文庫)★★☆☆☆

 今の高校生はいいなあ、と思うときがある。

 わたしが高校生だったころって、島田荘司笠井潔の全盛期が一段落ついたころと京極夏彦メフィスト賞が出るか出ないかくらいのころだったと思う。中高生にはリアルタイムで読めないんですよ、あんな高い本。

 その点メフィスト賞って新書だから中高生にも買えるし(その点ファウストってどうなんだろう)、広い意味での青春小説が多いから、リアルタイムで最新のミステリに触れてどんどんはまってけるんじゃないかと思う。

 というわけで学園小説である本書なんだけれど、「無駄に長い!」のひとことです。いかにも高校生的には重要っぽいことについて繰り返し会話が重ねられているので、同世代のころに読んだなら共感したかもと思うけれど、今のわたしが読んでも冗長にしか感じられませんでした。

 ミステリやホラーではなくオカルトと呼ぶべき世界設定を用いているのも好きじゃない。登場人物が作者と同名なのも、この小説でそんな必要あるのかなあと思いましたし。

 まあ、そうは言ってもね。高校生の自分に何を薦めるかって言ったら、『哲学者の密室』や『眩暈』や『姑獲鳥の夏』よりは本書を薦めるかなぁ(^^;。そういう〈タイプ〉の作品ってことです。

 雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。

 学園祭のあの日、死んでしまった同級生の名前を教えてください――。「俺たちはそんなに薄情だっただろうか?」なぜ「ホスト」は私たちを閉じ込めたのか。担任教師・榊はどこへ行ったのか。白い雪が降り積もる校舎にチャイムが鳴ったその時、止まったはずの時計が動き出した。薄れていった記憶、その理由は。(裏表紙あらすじより)
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  『冷たい校舎の時は止まる』(下)
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