『芸術の体系』アラン/長谷川宏訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

 『Système des Beaux-Arts』Alain,1920年

 一冊の芸術論・思想書というよりも、どちらかというと芸術に関する各論、思い切って『芸術ハンドブック』と呼んでみてもいいような本だと思う。音楽に興味があるなら音楽の章から読んでもいいし、彫刻に興味があるなら彫刻の章から読んでもいい。(「先に述べたように」みたいな文章が出てきたとしても、そこはカッコでくくって後回しにしても大丈夫)。第一章なんて飛ばしてもいい(爆)。

 少なくとも、アランを系統的に読もうとか、本書に書かれてあることを全面的に肯定しようとかでなければ、そういう読み方も可能です。

 だいたい雄弁とかフェンシングとかなんて、日本人的にはトンチンカンな感じを受けちゃうし。個人的には演劇の項がいちばんすんなり読めたというか、いちばんわかりやすかった。ほかと比べて観念的じゃないからかな。

 タイトルは「芸術」だけれど、エンターテインメントの作り手や商業的クリエイターも必読(とまではいかないがちょろっと読んでみてもいい)。

 アランの文章は難解なのだそうだが、しかし学者も意味を取れない(解釈が分かれるではなく)ような文章の本が、はたして本当に名著なのだろうか、という気はした。(それってつまり、フランス人が読んでもよくわかんないってことでしょ?)

 行進、曲芸、ダンスから絵画、音楽、建築、散文まで――。人間が人間として日々を生きるということと、芸術活動や芸術作品のありかたを常に結びつけて考えたアラン。第一次世界大戦に従軍し、戦火の合い間に熱意と愛情をこめて芸術を考察し、のびのびと書き綴った芸術論。(カバー裏あらすじより)
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