『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』矢作俊彦(講談社)★★★★★

 活字ならではの利点。オサムも綾子もまったく年を取っていない。笑えるくらいにかっこいいです。

 情けないとかかっこいいとか一つだけならともかく、例えばオサムを演じたショーケンみたいに、「情けなかっこいい」のを表現するのって難しいんじゃないかと思うんです。それが辰巳のあのエピソード一つで、かっこいいのとかっこわるいのが同居する辰巳らしさがピリッと表現されてしまうのだから見事というほかありません。

 演じていた水谷豊だって今はアキラの呪縛から離れて『相棒』を楽しんでいるみたいだし、作中人物にだってもうそろそろ一区切りつけてやらなきゃいけなかったのだ。

 ヒロインに女子高生を持ってくるあたりがおっさんの妄想くさくていけないけれど。

 P.S. 矢作作品を読んでいると、プロ野球ジャイアンツが「東京読売巨人軍」から「読売巨人軍」に名称変更したのも、戦略的には正しいのかも、って思えてくる。だって巨人ファンのほとんどは団塊世代だと思うもの(ちゃんと調べて確認したわけじゃないけど)。未知数である新たな地元ファンの獲得よりも、定年退職して全国に散らばっていく長年のファンをがっちり離さない方を選んだんだと思えば、「みんなの巨人」というのも驕りではなく藁をも縋る戦略なのかもしんない。

   『傷だらけの天使
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