『氷』アンナ・カヴァン/山田和子訳(バジリコ)★★★★☆

 『Ice』Anna Kavan,1967年。

 終末の近づく世界で、一人の少女を追う男――といってもロマンティックな話ではない。愛なのか何なのかすらよくわからない。「少女を追え」という命令をインプットされた壊れかけたロボットの如しといえば近いだろうか。ときどきヒューズが飛びながらひたすら少女を目指す。その壊れた感じと心の欠けた感じが、氷で覆われた世界の冷たさと相まって、真っ暗な(でも美しい)終末感を後押ししてます。

 異常な寒波のなか、夜道に迷いながら、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って、某独裁国家に潜入した私は、要塞のような〈高い館〉で、絶対的な力で少女を支配する〈長官〉と対峙するが……。刻々と迫り来る氷の壁、地上に蔓延する抗争と殺戮、絶望的な逃避行。恐ろしくも美しい終末のビジョンで読者を魅了し、冷たい熱狂を引き起したアンナ・カヴァンの伝説的名作。(カバー袖あらすじより)
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  『氷』


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