『L'Alouette』Jean Anouilh,1953年。
異端審問官の「人間狩り」という言葉がグロテスクだなあ。「神」ではなく「人間」主体(自己・自意識)の発言は、異端という文脈ではあるのだが、今の目で読むとやはりどきりとする。
ジャンヌ・ダルクに近代的個を見て語り直すというのは、たぶんこれ以前にもあるのだろうけど、やっぱり感動的です。
とはいえ殉教・殉死が美談になってしまってはいけない(はずだ)。
解説で触れられている「ナチ占領下のフランス」とはなるほどシャルルやブルゴーニュ派をヴィシー政権になぞらえているのか。
そういう意味ではラストで未来を見ているのは当然なのだろうな。
ふつうは作中の日付が変わったりするごとに幕を変えたりするものだと思うんだけど、この作品は尋問のなかに回想シーンを織り交ぜることで、時間の区切れのない一幕ものになっているところが面白い。
裁判が始まり、一人の娘の生涯が演じられる。無邪気な農家の娘ジャンヌは祖国を救えという再三の〈声〉に遂に立ち上がる。屈強な兵士を巧みに説得、軍勢を率いてオルレアンをイギリス軍の攻囲から解放し、王太子をシャルル七世として戴冠させたのだ。だが、悪魔の声に従った異端者と裁かれ、ジャンヌは一度は屈するが……。自分が自分であるため自らの運命を選び取り、凛々しく気高く生きぬいた人間の姿を描く不朽の名作。(カバー裏あらすじより)
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