「My Favorite SF」西澤保彦
萩尾望都「キャベツ畑の遺産相続人」。
「SFマガジン読者賞発表」
へえ。意外です。海外編一位はコニー・ウィリスで、国内編一位は桜坂洋でした。
「F&M月からN月までを(かろうじて)切り抜けながら」新城カズマ★★★★☆
――歴史的な十カ月のドサクサに紛れて、本当は何が起こっていたのだろうか?(袖惹句より)
今読まなければやがて厖大な註釈が必要になるであろうタイムリーな作品。ジャンル小説にはそのジャンルの作者‐読者間にだけ通じる記号を交えることがよくあるけれど、ニュースと会話をこういうふうにサンプリングするような書き方というのは、その究極の形かもしれません。しかも本篇の場合は、非ジャンル小説読者にも訴える(はずの)記号と力がありました。
「セクシー・ドールまなみちゃん」森奈津子★★★☆☆
――とびきり淫乱だが処女のセクサロイド。おれはモニター役をかってでたが……(帯惹句より)
あまり(いや全然)いい話じゃないのに、なぜかいい話っぽく終わってしまうのが無性に可笑しい作品でした。来たるべき高齢化社会を睨んだ老齢の性を描いて……いるわけではたぶん(いや絶対に)ないでしょう。
「小惑星物語」樺山三英★★★★★
――頭上にあるはずの星の世界をめざして、パラス人の一大建設事業が始まった。(袖惹句より)
こういう架空の評論・百科事典的なものは大好きです。シューアバルトの原典は読んだことがありません。バベルの塔についての屁理屈に、屁理屈なりに感心してしまいました。
「大森望の新SF観光局」2 年刊SF傑作選のベストイヤー
メリルの傑作選を復刊してくれえ。
「SFまで100000光年 65 出逢わない二人」水玉螢之丞
「MEDIA SHOWCASE」柳下毅一郎・宮昌太朗他
◆先月号に続いて(『MM』だったかも)『その男ヴァン・ダム』。ヴァン・ダムはあんまり好きじゃないんだけど、こういうのなら面白そう。
◆最初っから残りプレイヤー数が1000匹という、超高難度のゲーム『プリニー〜オレが主人公でいいんスか?〜』。こういう発想って好きだな。
◆『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』はSFという設定を活かしたターミネーター外伝ドラマ。
「SF BOOK SCOPE」林哲矢・千街晶之・牧眞司・長山靖生・他
イーガン『TAP』は当然として、クノー『あなたまかせのお話』は前衛とか実験とかじゃなく「異色短篇」だと思えばいいのか。
「地球移動作戦(第7回)」山本弘
「宇宙からおっこちるような帰還」椎名誠《復活!椎名誠のニュートラル・コーナー12》
写真や映像で見る「宇宙から見た地球」と実際に宇宙から見た地球の違い、想像すると感動的です。あとは、国際宇宙ステーションに関する書籍『絶対帰還。』がずいぶんと面白そうでした。スペースシャトルが事故ったため、原因が判明するまで打ち上げを停止する――すなわちステーションにいる三人の宇宙飛行士はほったらかし。ある部分でNASAよりすぐれたロシアのミールが三人を迎えに行くが、ミールは二人乗り……。これがSFじゃなくて現実のできごとだというのだから参ります。
「怨讐惑星(第10話)降誕祭が、やってくる」梶尾真治
「おまかせ!レスキュー Vol.128」横山えいじ
「デッド・フューチャーRemix」(第77回)永瀬唯【第13章 ハイ・フロンティア】
「サはサイエンスのサ 167」鹿野司
経済をこっくりさんに例えるのって、斬新ですがすごくわかりやすい。
「センス・オブ・リアリティ」「生きた証という幻想」香山リカ
「伊藤計劃インタビュウ」
新作『ハーモニー』記念。『虐殺器官』を見つけた親に心配して捨てられちゃったという話が出てきて、そういわれれば不穏なタイトルに不穏なイラストですね、知らない人が見たら。
「フルーテッド・ガールズ」パオロ・バチガルピ/中原尚哉訳(The Fluted Girl,Paolo Bacigalupi,2003)
――リディアとニアはフルート化された双子の姉妹。スターへの道を歩むべく……。(袖惹句より)
環境SF(と便宜的に呼んでおく)のパオロ・バチガルピの出世作は、びっくり「フルート化された女の子」の話です。独裁者(というか経済の支配者?)によって絶世の音色を手に入れられ、その代償にあまりにも脆い骨を授かったという、神話的なモチーフが美しい作品です。えらいおっかない用心棒にしても、人体改造にこういう方向性もあるんだな、という点が新鮮でした。
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