『赤×ピンク』桜庭一樹(角川文庫)★★★★☆

 ファミ通文庫の再刊。

 これまで読んだ桜庭作品は、世界がひっくり返るような話ばかりだったので、これもそういうのを期待していたんだけれど、どちらかといえば『放課後の音符』な感じの作品でした。

 しかも何に悩んでいるのかわかんない感じの悩み方というのは、ちょっとない感じで新鮮でした。まっすぐな感じのイメージだったので、ぐだぐだな感じなのは意外で。でも思春期の人にはいちばん普遍的な作品かもしれません。

 気になったところが一つ。ガールファイトとかSMとかレズとか格闘技とかなら、現実のリアルであれフィクションのなかのリアルであれ、まったく有りで問題ないんだけど、第一話のケッコンというのが一つだけ浮世離れ現実離れしていて、ここだけメルヘン少女漫画チックで浮いてたような。物語上「檻から出してくれる父親」が必要なのだとはいえ。

 それともこれは、この本は「夢物語です」宣言なのだろうか。

 ひっそりと「Sakuraba Kazuki Collection」と書かれてあるので、これからも他社のラノベレーベル作品を拾ってまとめて出してくれるということでしょうか。と思って見れば、表紙のタイトルバックが帯のように背表紙にまで掛かっていて、ほかの作家の文庫とは一線を画してある。きっとこういうデザインでシリーズ化するつもりなのでしょう。『推定少女』も出ましたね。

 東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ガールファイト、集う奇妙な客たち、どこか壊れた、でも真摯で純な女の子たち。体の痛みを心の筋肉に変えて、どこよりも高く跳び、誰よりも速い拳を、何もかも粉砕する一撃を――彷徨のはて、都会の異空間に迷い込んだ3人の女性たち、そのサバイバルと成長と、恋を描いた、最も挑発的でロマンティックな青春小説。(カバー裏あらすじより)
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