『道化の町』ジェイムズ・パウエル/森英俊編(河出書房新社河出ミステリー)

 ジェイムズ・パウエルが一冊にまとまるのは嬉しい。が、河出ミステリーのシリーズはユーモア・ミステリと奇妙な味ばかりなので、いいかげん飽きてきた嫌いがある。

「最新のニュース」(Have You Heard the Latest?,1967)★★★☆☆
 ――「最新のニュースを聞いたかい? ドロシーのやつ、うちの管理人は国際的なゴミ箱の蓋窃盗団の首領だと思っているらしいんだ」

 ユーモラスで不思議なエピソードをとっぱじめに持ってきておいて、だんだんと深刻になってくるのはいいのだけれど、結局はその最初のエピソードをジョーク的にしか回収し切れてないのがちょっと。
 

「ミスター・ニュージェントへの遺産」(A Banquest for Mr. Nugent,1994)★★☆☆☆
 ――ポール・ニュージェントは非の打ちどころのない客だった。ミセス・ボウルズは、彼がなぜ訪ねてくるのか考えるようになった。最初は、何かなくなっているものがないかと目を光らせた。しかし、彼は何も持ち出すことはなく、謎は深まるばかりだった。

 トリッキーな犯罪計画だと思っていたら、途中から「どっちがいい人でしょう」合戦みたいになってきた。
 

「プードルの暗号」(The Code of the Poodle's,1990)★★☆☆☆
 ――おばのフローラは、プードルがモールス信号を使って会話しようとしていると信じ込んでいた。

 皮肉な結末というか、ミステリ的なひねりとしては定石通りの申し分ない結末なのだけれど、しゃべる(?)動物という設定があまりに珍奇なために、切れ味のピントがぼやけてしまった感がある。
 

「オランウータンの王」(The King of the Orangutans,1992)★★★★☆
 ――次に出す絵本にすべてがかかっていた。重圧に悩まされている間、わたしは動物園に行き、オランウータンの檻のそばで気持ちを落ち着かせた。

 この世の願いを統べる超越的な支配者に翻弄される、シリアスタッチな作品なのだが、象徴とか幻覚とかではなく、実際に生身のオランウータンが出てくるせいでコミカルな味わいもある、不思議な作品。
 

 あんまり肌に合わなかったのでここで打ち止め。
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