『ミステリマガジン』2009年3月号No.637【特集 デス・クルーズへの招待】

「船旅は高くつく」若竹七海
 エッセイ。著者がこれまでに船上ミステリを書くために集めた資料紹介。

「船という非日常」近藤史恵
 エッセイ。

「殺人は九ポイント」ナンシー・ピカード/宇佐川晶子訳(Nine Points for Murders,Nancy Pickard,1999)
 ――スイート担当のスチュワードは、見覚えのある夫妻に気づく。読み終えてみればこれは、仕事一筋でいたために周りが見えなくなり、現実とお芝居の区別がつかなくなった人の話なのでした。スチュワードを視点人物にして、探偵作家夫妻の方に謎があるのではないかと読者に思わせるような書きぶりが見事です。

「忘れじのクルーズ」バーバラ・コリンズ&マックス・アラン・コリンズ小田川佳子訳(A Cruise to Forget,Barbara Collins & Max Allan Collins,1999)
 ――海上で殺人計画を成功させた男の前にたちはだかる目撃者とは?

「ホット・トライアングル」福田和代
 ――新米警官は学生時代の仲間とともに束の間の航海を楽しむ。

「ビンゴ・カードを盗め!」エドワード・D・ホック/木村二郎(The Theft of Bingo Card,Edward D. Hoch,1990)
 ――休暇中の怪盗ニックの乗る船で殺人事件発生。さらに盗みの依頼が! このシリーズの魅力は、「どうやって盗むか」というアイデアと「なぜそんなものを盗むのか」という依頼人の秘密の真相だと思うんだけれど、本篇には「どうやって盗むのか」というアイデアの魅力はありませんでした。

「小特集 追悼マイクル・クライトン
 へえ。『ウエストワールド』ってマイクル・クライトン脚本・監督なのか。ユル・ブリンナーの遊び心だとばかり思ってた。

「機械探偵クリク・ロボット 五つの館の謎(後篇)」カミ/高野優訳(Krik-Robot, Détective-à-moteur L'Énigme des 5 pavillons,Cami,1945)
 ――第二の殺人が起き、ついに機械探偵が推理を披露する!

「新・ペイパーバックの旅 最終回(第36回)=ネット古本市を超えて〈ゴールド・メダル大作戦〉」小鷹信光
 ネット古書店で一冊一冊集める買い方から、とうとう個人間でのまとめ買い取引に手を染めてしまいました(^_^;。お若い、と言えばいいのでしょうか。楽しんでるのが伝わってくるので読んでいるこちらも楽しいです。

「書評など」
◆風間賢二氏はエムシュウィラー『カルメン・ドッグ』を、大森望氏は伊藤計劃『ハーモニー』を。

◆面白かったのは松坂健氏が笠井潔『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』を、「たこつぼ」というキーワードで書評していることで、一つの立場からの回答としては非常に説得力のあるものでした。

クリント・イーストウッド監督チェンジリングは実話をもとにした映画。見つかった子どもは誘拐された子どもとは別人だったのに、体面を気にする警察から同一人物だと圧力をかけられる……という、根っこ自体はありがちだけどここまでスケールの大きいのには呆れるばかりです。しかも昔ながらの権威がのさばってそうな田舎とかじゃなく場所はLAなんだそうです。普通バレるでしょ。そしてバレたときのことを考えて自重するでしょ。ほんと事実は――です。

「独楽日記(第15回)『われらが歌う時』」佐藤亜紀
 一時期は鈍りがちにも感じられた佐藤氏の毒舌技巧が復活して来てます。前半は人種差別的なフランスの教授の話をえんえんとしていて、何だこりゃ?と思っていたらちゃんと『われらが歌う時』の話になります。

「誰が少年探偵団を殺そうと。」07 千野帽子「物語と小説と」
 なんだかこれまでと文体や文章の運び方が違う。なぜなのかはよくわからない。

「夢幻紳士 回帰篇(第七話)木精」高橋葉介
 いつもよりも物語性が強い。
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