『オタバリの少年探偵たち』セシル・デイ=ルイス/脇明子訳(岩波少年文庫)★★★★☆

 『The Otterburry Incident』Cecil Day Lewis,1948年。

 ニコラス・ブレイクが本名で書いたジュヴナイル・ミステリ――というのはミステリ・サイドに寄りすぎた説明かな。桂冠詩人セシル・デイ=ルイスが書いた児童文学作品というべきでしょうか。

 割ってしまったガラス代を集めるために知恵を絞り、正攻法からインチキまで考え出されたさまざまなお金集めが楽しい。靴磨きなんて(悪知恵だけど)頭いい。探偵・謎解き部分も「推理」というよりはこういう「考えること」の延長にあるように思います。あるいは戦争ごっこのグループ同士で講和条約を本格的に結んだり、推定無罪のちゃんとした裁判を行ったり。啓蒙的でありながらまったく説教臭くないどころか、自分も子どもになっていっしょに遊んでいるみたいに楽しかった。作中人物がいみじくも言っているように、全編これスリリングな戦争ごっこ、お金集めごっこ、裁判ごっこ、探偵ごっこ、尾行ごっこなのだ。

 あっち系の児童文学に出てくる子どもって不思議に、お利口ちゃんなガキ大将どもなんだよなあ。時代なのかお国柄なのか。大人になったらチョイワルになりそうな感じか?

 第二次大戦直後のイギリスで、戦争ごっこにあけくれる少年たちの物語。ある日、みんなでかせいだお金が消えてしまいます。犯人を見つけ、お金をとりもどそうとするうちに、いつのまにか、悪党一味の大犯罪があきらかに……。(カバー裏あらすじより)
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