『地球の静止する日』ハリー・ベイツ他/南山宏・尾之上浩司訳(角川文庫)★★★☆☆

 角川文庫の背表紙デザインがまた変わった。誰も望んでないのにね。昔のみたいにヘボくなって懐かしい。

 アンソロジーなのに各篇扉に著者名がなくタイトルだけというデザインが斬新。映画原作ものだから、原作者ではなく映画化名をアピールしたのかと思ったのだけれど、扉に書かれているのは映画化名ではなく原作名なので、事情はよくわかりません。ものすごく見づらいんですが。。。

地球の静止する日」ハリー・ベイツ/南山宏訳(Farewell to the Master,Harry Bates,1940)

 これは創元版で読んだのでパス。
 

デス・レース」イブ・メルキオー/尾之上浩司訳(The Racer,Ib Melchior,1956)★★☆☆☆
 ――レーサー達が出発していく。ウィリーは心に決めていた。最高得点をたたき出してやる! タイムだけじゃない。“得点”も稼がねばならない。ウィリーは男にぶちあたり、相手を撥ね上げ、最初の“得点”をあげた。

 殺人レースの話。レーサーに迷いが生まれて破滅に向かいます。
 

「廃墟」リン・A・ヴェナブル/尾之上浩司訳(Time enough at last,Linn A. Venable,1953)★★★★☆
 ――ヘンリーには叶わない望みがあった。本が読みたかったのだ。ヘンリーには自由な時間がなかった。勤務以外の時間は、妻に支配されていたからだ。

 終末SFに本を読みたい主人公を据えた異色作です。このミスマッチは何なんだと思いながら読んでいくと、なるほど終末にふさわしい孤独感・喪失感が待ち受けていました。それをこういうふうに表現するあたりに並々ならぬ才能を感じるのですが、作者はこれ一作きりの作家なのだそうです。それにしてもこれをどうやって映画化したのかと思ったら、納得!『トワイライト・ゾーン』の一篇でした。
 

「幻の砂丘」ロッド・サーリング&ウォルター・B・ギブスン/尾之上浩司訳(Beyond the Rim,Rod Serling&Walter B. Gibson,1964)★★★☆☆
 ――ホーンたちの幌馬車隊は、もう何日も砂漠を歩いていた。あの砂丘を越えて何も見つからなかったら、引き返そう。ホーンはそう約束し、砂丘を越えると、そこには灰色のつるつるした道が広がり、甲虫のような怪物がうなりをあげていた。

 これも『トワイライト・ゾーン』より。これはもう定番中の定番パターンの作品です。
 

「アンテオン遊星への道」ジェリイ・ソール/尾之上浩司訳(Counterweight,Jerry Sohl,1959)★★★★☆
 ――一年間に及ぶ星間移民船での生活は、乗客たちに深刻な影響をおよぼしていた。暴動が起きたとき、司令部もどう対処していいのかわからなかった。そこでジャーナリストのキース・エラスンが事態の報告者として同乗することになった。

 SF的な謎に心理学的な真相、最後に明らかになる断章の意味。レッド・マスクの謎に食いついた読者もまんまと一杯食わされたわけで(^_^)。『アウター・リミッツ』より。
 

「異星獣を追え!」クリフォード・D・シマック/尾之上浩司訳(Good Night, Mr. James,Clifford D. Simak,1951)★★★★☆
 ――彼の名前はヘンダースン・ジェイムズ。人間で、地球という惑星にいる。年齢は三十六歳。“プードリイ”が逃亡し、この街のどこかにひそんでいる。今夜中に仕留めなければ、繁殖していっせいに人類を襲うだろう。

 人間の心を読み操ることのできる最凶の異星獣を倒すにはどうすればいい?という難問が、どう解決されるのか――ヒントは初めから読者の目の前に現れていたのだから驚きです。そしてその退治法から必然的に導かれる、思いがけない展開。B級感たっぷりの邦題もそれはそれで「らしい」のですが、やはり原題の味わいが余韻を残す作品です。
 

「見えざる敵」ジェリイ・ソール/尾之上浩司訳(The Invisible Enemy,Jerry Sohl,1955)★★★☆☆
 ――その星ではもう何人もの人間が姿を消していた。今度の調査には〈コンピュータ・コル〉から派遣された科学者アリスンも同行していた。地表は一面の砂ばかり。何もない。何も残さずに、部隊が消えてしまった。データがない以上、科学者にもどうすることもできなかった。

 何となくパターンが似ているのは、ソールに問題があるのではなく番組のカラーに合わせた結果でしょうか。古いタイプの人間と新しいタイプの人間の対立というのはよくある話ですが、憎み合ったりすることはなく「干渉せず」というのが現代人的というか学者的というか、ドライな科学者のおかげでサスペンスが削がれています。敵の居場所に意外性はないのですが、その星の××が実は○○だった、という発想のスケールに圧倒されました。
 

38世紀から来た兵士ハーラン・エリスン/尾之上浩司訳(Soldier,Harlan Elison,1957)

 『SFマガジン』で読んだのでパス。これと次の二作は正確にいうと原作ではなくパクられ元。
 

「闘技場」フレドリック・ブラウン/尾之上浩司訳(Arena,Fredrick Brown,1944)★★★☆☆
 ――その“存在”は言った。人類と“侵略者”がこのまま殺し合っても共倒れするだけだ。代表者が戦い、生き残った方の種族が生き延びよ。生き物を通さないバリアーを挟んで、カースンと“侵略者”は戦うことになったが……バリアーを通れないのにどうやって倒すというのか?

 なんて無茶な超越者だ(^^;。とは思うもののそこはおいといて。この作品の面白さは、生き物を通さないバリアーを挟んで、武器も持たずに、どうやって相手を倒すのか、という点に尽きます。

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