『GOSICK』桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)★★★☆☆

 謎解きミステリとしては有名な大ネタと小ネタが一つずつ。大ネタの必然性がよくわかりませんでした。真犯人を疑うきっかけとか手をつないでいる理由とか、細かい部分の方が印象に残りました。「アレックス」というのもたぶん叙述トリック? いろいろ仕掛けは細かいです。

 あ、あと、(架空の)ヨーロッパ国が舞台になっているのが、事件の真相と関わっているのが、なにげにポイントかな?

 初登場シーンはもちろんシャーロック・ホームズ。となるとマリー・セレスト号ネタも実話からというより語られざる事件がらみでしょうか。

 過去シーンはジェノサイドのホラー小説。こういう部分にはギャグや説明的な台詞も入らないので、みるみる引き込まれました。エレベーターが墜落して(でも墜死じゃなくて溺死とか)、現在シーンでは定番の斧が登場したりとか、直接的な描写こそないものの実はけっこう残虐なところも。

 エピグラフが『アリス』だし、トゥイードゥルダムとトゥイードゥルディーも出てくるし、第一章の冒頭付近の文体もアリスっぽい気がします(気のせい?)。ほかにもアリスネタがあるのかもしれません。

 覚悟していたけれど、意外とキャラ萌えじゃありませんでした。久城くんが一人でがんばってますが。あんまり脈絡なく一弥に「それは面妖な……」って言わせているのは著者の趣味でしょうか。明らかにホームズがモデルのヴィクトリカが老婆のような声という設定なので、勝手に露口茂に脳内変換して読んでしまいました(いや露口茂は老婆じゃないけど)。

 聖マルグリット学園の図書館塔の上の上、緑に覆われたその部屋で、妖精のような少女――ヴィクトリカは待っている。自らの退屈を満たしてくれるような、世界の混沌を――。/その少女は語るのだ。パイプをくゆらせながら。「混沌の欠片を再構成しよう」/そして、たちどころにそのどんな謎をも暴く……いや、〈言語化〉してしまうのだ……という。/西欧の小国・ソヴュールに留学した少年・久城一弥。彼はふとしたことから知り合った少女・ヴィクトリカとともに、郊外に住む占い師殺人の謎に挑む。しかし、それはある大きな謎の欠片でしかなかった。囚われの姫と、彼女を護る死に神が、幽霊の現われる呪われた船の謎に挑む。白と黒の物語の幕が今、開きます!(カバー袖あらすじより)
 ------------------

  『GOSICK』1
  オンライン書店bk1で詳細を見る。
 amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。


防犯カメラ