『密室入門!』有栖川有栖×安井俊夫(メディアファクトリー・ナレッジエンタ読本14)★★★★☆

 小説家・有栖川有栖にはあまり密室ミステリのイメージがないのだけれど、読者としてはかなりの密室好きであるらしく、『密室大図鑑』に続いての密室ガイドの登場です。

 この本が面白いのは、「密室ミステリ小説」入門というよりも、タイトル通り「密室」入門というべきものであるところ。「密室」とは何か。「密室」の分類。建築的に見た「密室」。……

 ミステリ好きなら第二章まではそれなりにお馴染みのものですが、第三章「密室を建築から考える」というのは、従来のトリック別による密室分類ならぬ、言うなれば建築による密室の分類で、建築に疎いわたしとしては、有栖川さんともどもいろいろ感心しきりの章でした。

 「屋内の密室を構成するパーツは次の5つです。「床」「壁」「天井」。そして「出入り口扉」「窓」のみですね」なんて前提を読むと、それだけでわくわくしてしまいます。建築家は「ドア」と「引き戸」を、ある理由から分けて考えるのですが、その単純にして明快な理由を聞いたときの腑に落ち具合は、ある種ミステリのカタルシスにも似ているかも!?(似ていないかも)。

 カーや天城一分類とはまたひと味違った密室が出てきて、もしかすると新しいバリエーションの密室ミステリが現れるんじゃないかと楽しみにもなりました。

 第四章「作家が知りたい建築事情」は、防犯上からもためになる章でした。

 具体的な「密室ミステリ小説」に触れるには、本書ではなくそれぞれ『密室大図鑑』『犯行現場の作り方』の方をおすすめします。
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