『厭魅の如き憑くもの』三津田信三(講談社文庫)★★☆☆☆

 最近の作家さんは文章や小説がうまい人が多いので、いい意味でこんな素人っぽいミステリは久しぶりです。

 小説家が書いた手記という形を取っているので、真相解明後に小説家が本書の伏線の解説をしたりするのですが、そういえば『本陣殺人事件』もそんなだったなあと懐かしくなりました。(……ということは、どもりとかへっぽこぶりとかもみんな金田一耕助……?)

 まがまがしい民俗社会、憑きもの筋の不気味な旧家、そこここで起こる怪しげな出来事、不可思議な殺人……道具立ては揃っているのに、まったく恐ろしくありません(^_^;

 だって、探偵役もわりとオーバーリアクションの剽軽な人なのですが、全体的に出てくる人たちみんな芝居っ気が強くて(びっくりしたときやへどもどしたときには必ずといっていいほどみんな律儀にどもります)、おどろおどろしさなんてカケラもありません。

 解決編の多重解決にしても、真相が二転三転して世界がひっくり返るような凄みはなく、迷探偵が口にした出任せがことごとくはずれて仕方なくさらに出任せを重ねるようなだるだるぶり。

 最後に明かされる大ネタも、凄いんだかくだらないんだかわかりません(インパクト大なのは間違いないですが)。カカシ様なる御神体を崇める旧村という舞台設定や憑きもの民俗学ペダントリーも、それを成立させるための飾りでもあったんですね。

 神々櫛《かがぐし》村。谺呀治《かがち》家と神櫛《かみぐし》家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶《とうじょうげんや》」シリーズ第一長編。(カバー裏あらすじより)
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