『青い城』ルーシー・モード・モンゴメリ/谷口由美子訳(角川文庫)★★★☆☆

 『The Blue Castle』Lucy Mode Montgomery,1926年。

 赤毛のアンに並ぶ名作、の惹句につられて読みました。

 タイトルの「青い城」とは、主人公が心のなかに夢見ている空想の世界のこと。

 読み始めてしばらくは戸惑いました。主人公は、おじの遺産を待ちながら空想の世界に遊ぶ受け身のオールド・ミス、ヴァランシー。とにかく暗い。辛気くさい。気が滅入る……。アンのような作品を期待していただけに、途中で読むのをやめようかと思いました。

 ふだんは読む前にあらすじを確かめたりはしないのですが、まさか最後までこの調子なのかと不安になって確認すると、「余命1年と書かれていた……。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!?」と書かれていたので一安心。このあと展開があるのですね。

 そうは言ってもそこに至るまでに70ページ近くかかりました。しかも余命を知ってからのヴァランシーも、どう変わったかというと、やけっぱちという言葉がぴったりで、世の中すべてを嘲笑するような荒れっぷりです。つまらない家族に対する意地の悪さ(下ネタ、「くそばばあ」、無視etc)というのもそれはそれで面白いものの、やはりアンのようなものを期待していたので(以下略)。。。

 そんな期待に答えてくれるのが、ようやく130ページに至ってからです。家族に当たり散らしていたヴァランシーが、とうとう外に出ることになった場面。あろうことか女ったらしで有名な老人の家で働くことに――。こういうのを待ってました。勝気で、利発で、前向きで、優しくて、夢見がちで、内面を大事にして、問題に立ち向かって。

 さあここから一気に面白くなるのか――というとそうでもないのが微妙なところです。あとがきを読むと、とある編集者の方にも言われたそうですが、主人公が二十九歳というのが……。少女がすれば健気なことでも、おばさんが同じことをしたら、夢見る夢子さんぶりばかりが際立ってしまって、違和感ばりばりでした。おっさんが真顔で「宝島に行きたい」とか「オラ冒険がしたいんだ」と口にしたとしたら、……う〜ん、ノスタルジーとしてはありかなあ。。。たまには夢見たっていいじゃない、てな感じかな。

 貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた……。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!? ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。幻の名作がついに文庫化!(カバー裏あらすじより)
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