文豪怪談傑作選に続いて、柳田國男『遠野物語』を怪談として再(?)評価する試みの第二弾。京極夏彦による『遠野』再話のほか、あとは佐々木喜善にスポットが当てられています。
「冥談 遠野物語より」京極夏彦
やけに理屈っぽい。京極堂シリーズの蘊蓄なら喜んで読むのだけれど、これは場違いな感じがしました。
「精霊たちの物語」安藤礼二
「山田野理夫インタビュー」
「家屋の怪物」佐々木鏡石
喜善の評伝を書いた山田野理夫のインタビューと、喜善の創作小説。
「〆」山白朝子
蝋庵とともに訪れた宿の天井には、人の顔のような染みが浮かび、出された魚は人のような顔をしていた……。
目に見えて不気味なことを描きながら、相対的に残酷なことを浮かび上がらせていて、こういう落差の衝撃ってたまりません。
短歌コーナーでは「広場すべて速度と変る一瞬をゆらゆらと錯覚の如く自転車」高安国世、「提げくるは少年にしかずあぢさゐの失神したるやうな花首」平井弘の二首がよかった。「広場すべて速度と変る」とか「あぢさゐの失神したるやうな花首」とか、それだけで好きになれます。
「隠処」水沫流人
「厠の怪談」からは水沫流人の作品を読みました。トイレっていうか、歯医者が怖いよ! 「ヒイッ、ヒイイイ」って……。子どもの目から見た歯医者の恐ろしさ――なのかな、どうなんだろう?
「江戸怪談実話の迷い道」高原英理
「スポットライトは焼酎火11 湯本豪一」
『明治期怪異妖怪記事資料集成』。編者の苦労と作品の形態を考えると、五万円もやむなしなのか……。廉価バージョンみたいな『明治妖怪新聞』[bk1・amazon]や『図説江戸東京怪異百物語』[bk1・amazon]もあるにはあるけど。
いつのまにか号数表記が二桁になってることに気づきました。10号からか。
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『幽』vol.11
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