『ミステリマガジン』2009年09月号No.643【特集 密室がいっぱい!】

「迷宮解体新書21 辻村深月

「私の本棚21 草上仁」

「ポー・ハウス&ミュージアム館長インタヴュー」
 

「密室ミステリ映画を語るのは難しい」濱中利信
 日本では未紹介の密室映画&テレビ三本を紹介。

「幽霊執事5 オフィス」坂田靖子
 

「空中の殺人」ピーター・トレメイン/仁木めぐみ訳(Murder in the Air,Peter Tremayne,2000)★★★☆☆
 ――旅客機の鍵のかかったトイレで、大企業の社長の死体が発見された。(袖コピーより)

 密室&不可能ミステリのアンソロジーに収録されたノン・シリーズもの。謎解き自体はかなりゆるいのですが、ただ、「密室の謎」が解けると同時に、犯人特定の手がかりにもなる(伏線も張ってある)ところがよくできています。
 

「密室がいっぱい エッセイ」有栖川有栖柄刀一・安井俊夫
 

「殺人エスカレーター」ポール・アルテ/平岡敦訳(L'escalier assasin,Paul Halter,2000)★★★☆☆
 ――狭く長いトンネル内のエスカレーターで、殺人事件が発生し……。(袖コピーより)

 密室なんてそもそもが現実にはあり得ない――とすれば、こういう現実度の欠片もないバカらしい犯罪こそ、密室ものらしいと言えるのかも……というのは屁理屈ですが、謎よりもむしろ真相に気づくきっかけに妙味がある作品です。
 

対立候補が持つ丸太小屋の謎」エドワード・D・ホック/木村二郎(The Problem of the Candidate's Cabin,Edward D. Hoch,2004)★★★★☆
 ――親友の保安官にかけられた殺人容疑をサム・ホーソーン医師は晴らせるか。(袖コピーより)

 現場にいたのは保安官と被害者と猿だけ。ドラマチックな解決編はミステリの楽しさの一つです。
 

「追悼 栗本薫日下三蔵綾辻行人

「追悼 永井淳」戸田裕之・山野辺進
 

「CRIME COLUMN 317」オットー・ペンズラー
 クリスティーのポワロものの未発表原稿が見つかったそうです。『物言えぬ証人』の原形短篇と、「ケルベロスの捕獲」という同名別短篇とのこと。

書評など
◆チャイナ・ミエヴィルの新作長篇『The City & the city』は東欧+ハードボイルド+ファンタジイだそうです。

ピーター・トレメイン『修道女フィデルマの叡智』はシリーズものの短篇集。「十七世紀のアイルランド」が舞台のシリーズ「入門篇」とのこと。

ドゥエイン・スウィアジンスキー『解雇手当』は『メアリー−ケイト』の著者による二冊目の邦訳。本文の袖に広告が載っていました。「業務命令、全員死ね!」。これだけで誰の作品かわかってしまうところがすごい(^^。

◆国内からは獅子宮敏彦『神国崩壊 探偵府と四つの綺譚』、歌野晶午『絶望ノート』、湊かなえ『贖罪』あたりでしょうか。普通なら瑕、批判になりかねない「時代小説の世界をかなり柔軟にとらえている」という獅子宮作品の特徴を、「SFやファンタジイを基礎にした謎解きミステリの流れから生まれた作品」を好意的にとらえているところに面白味を感じました。

◆周辺書からは高橋哲雄『本、註多きがゆえに尊からず 私のサミング・アップ』。ホームズ物語やドイルのなかにスポーツマン精神やフェアプレイ精神を見出すのはとりたてて新しい指摘ではないと思うのだけれど、その「裏付け」に注目したいところです。
 

「虚実往還」(1)吉岡忍
 新連載スタート。「神々の声に支配され、動かされる」『イーリアス』の人間たちに、「人間の意識の起源」を見たり。

「独楽日記(第21回) 「歴史は繰り返す、ただし――って冗談じゃないよ」佐藤亜紀
 ネタに突っ込むならいいけど、天然で無神経なのには突っ込んでられないどころか気に障る、というような話。『トランスフォーマー/リベンジ』への怒りの枕に『ニーベルングの指輪』を持ってくるところが佐藤氏らしい。
 

「日本映画のミステリライターズ」(最終回=第37回「長谷川公之と『警視庁物語』」)石上三登志

『犬なら普通のこと』(第4回)矢作俊彦司城志朗

「三部作完結記念〈ミレニアム〉の世界への招待」川出正樹・吉野仁

「夢幻紳士 回帰篇(最終話=第十三話)幽霊船 後篇」高橋葉介
 

「旅人本の虫レベ(21)」レベッカ・スーター
 アレッサンドロ・バリッコ『Senza Sangue』が紹介されてます。好きな作家なんだけど、邦訳出ませんね。レベさんはイタリア人でいいなあ。

「Dr.向井のアメリカ解剖室(9)」
 う〜ん、さすがにこういうのはついていけないなあ。ハルキストによる「僕はこう読みました」。
 

「誰が少年探偵団を殺そうと。」13 千野帽子オイディプス神話のミステリ的展開。」
 お、元に戻った。今回取り上げられたのは、ロス・マクロブ=グリエオイディプス神話と『失われた時を求めて』。こういうひっちゃかめっちゃか(に見える)組み合わせをくっつける評論って楽しくて好きです。
 

「お茶の間TV劇場(13)マンハッタン・スキャンダル」千葉豹一郎

ロベール・トマ『罠』がフーダニットにより上演、という広告が載っている。

「ミステリ・ヴォイス・UK」(第21回 夜の来訪者)松下祥子
 『夜の来訪者』のポスターが「『エクソシスト』の有名なポスターを意識した」んだそうです。ははは(^^! 意識したっていうかパクリオマージュですよ。

「夜の放浪者たち 第57回 小栗虫太郎黒死館殺人事件』(後篇)」野崎六助
 -------------

  『ミステリマガジン』
  オンライン書店bk1で詳細を見る。
 amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。


防犯カメラ