『幽』Vol.12【稲川淳二スペシャル/『幽』怪談実話コンテスト・『幽』怪談文学賞/エロ怖い怪談】

稲川淳二スペシャル」
 どうしてもテレビの怪談番組ってキワモノのイメージがあるので、ちゃんと聞いたことはなかった稲川怪談。「厚さ1mmの幽霊」は稲川淳二だったか桜金造だったかも定かではない。そんなわたしでも新作怪談「隣の奥さん」を読むと、台詞の部分を稲川氏の甘くかすれただみ声に脳内変換してしまう。おそるべし語りの威力。京極夏彦×稲川淳二の対談もあり。
 

「第1回『幽』怪談実話コンテスト選考会リポート&受賞作掲載」
 怪談実話コンテストが第一回というのは意外な感じがしたけれど、「bk1怪談大賞」か何かとごっちゃになっていたらしい。『幽』では初の試み。

「黒四」巫林檎
 というわけで第一回の受賞作。ダムの話。全体的には怖い話ではないものの、「手の少し先に……」というところだけは怖さの針が跳ね上がりました。特にわたしは小さいころ下水道の掃除をしていたら芋虫の死骸をもろにつかんでしまったことがあって、それ以来「弄《まさぐ》った」先にある予期せぬ何かというものに生理的に弱いので。
 

「第4回『幽』怪談文学賞選考会リポート&受賞作掲載」
 「大河短編」「黄色い豆電球がいつも見えているような感じ」という金子みづは「葦の原」、「一種の文豪怪談」「資料を組み合わせ、怪談として再構成」した三咲光郎「霊魂」、「短編連作時代小説の一編としては申し分ない」という八坂哲「屍体返し」……候補には挙がったものの受賞を逃したこの三篇が読みたかった。

 受賞作は神狛しず「おじゃみ」谷一生「住処」の二篇なのですが、う〜ん、正直、毎回同じ選者が自分の好みを押し出してゆく銓衡スタイルの限界を見たような……。印象的な方言やフレーズに甘かったり、生活感や業とか日常を掛け違ったものだったり。個々の作品の出来云々というよりも、「またか……」という感は否めません。怪談ってそういうもの、と言われればそれまでなのですが。。。
 というかそもそも怪談って何なのかわからなくなってきました。肝試しで話すのも怪談。小泉八雲も怪談。めちゃくちゃ範囲が広いかと思えば、ホラーと怪談は違うだとか言っていきなり狭くなるし。

「新人競作エロ怖い怪談」
 宇佐美まこと・黒史郎・長島槇子。長島槇子「両国水妖譚」が好みです。美人でスタイルもいいのに夜鷹をしている女の話。荒唐無稽なのに、それを感じさせない終盤の急展開。
 

「江戸怪談実話の迷い道(2)」高原英理
 『新著聞集』より。火車・死体雲に入る・蛇娘。

「スポットライトは焼酎火12 『幕末明治百物語』『怪談異譚 怨念の近代』
 アカデミズムによる怪談本。

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 『幽』Vol.12


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