朝日ソノラマで出ていた愛蔵版を全3巻の並装版で出し直したものらしい。
『ネムキ』に連載中の『ななめの音楽』がすごかったので、ちょうど新装刊行された本書も購入。このころはまだモロに少女漫画チックな絵柄だったんですねえ。初出を見ると三話目の「空中庭園」以降とそれ以前では執筆時期にかなり開きがあって、一・二話目は内容と完成度から見ても顔見せ的な趣が強い。
職人が丹誠込めて育てた観用少女《プランツ・ドール》。一日三回のミルクと週に一回の砂糖菓子を与えるほかに、必要なのは愛情だけ。プランツ・ドールの微笑みに魅入られた人々が、ときに不幸にときに幸せに。
前向きな話が多いので何度も読みたくなります。
「空中庭園」で描かれるレトロな機械仕掛けの庭園や、各編で描かれるいびつな未来都市に、『ななめの音楽』にも通ずる萌芽が感じられます。
「嵐」は、プランツ・ドールの用途からするとちょっと異色な作品。プランツ・ドールの笑顔ではなくて、人間の女の子の笑顔が印象的な作品でした。
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