『観用少女』(2)川原由美子(朝日新聞社眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)★★★★☆

 なぜか初出発表順とは収録順を入れ換えているようです。「流砂」から「ユメデアウマナザシ」までが第一巻の続き。「ポプリ・ドール」から「楽園の果実」までが、第一巻第一話「食卓のミルク」第二話「スノウホワイト」から第三話「空中庭園」までのあいだに発表された初期作品。

 結果的に本書の前半には明るめの作品が、後半には暗めの作品が収められています。

 「“プレゼント”」「珊瑚」あたりは、明るいを通り越してテンション高過ぎてついてけなかったので、バランスを考えると収録順入れ換えは正解だったかも。第一巻で描かれた「天国の涙」(と宝石店員)が第二巻の後半になってようやく再登場という弊害もあるけれど。

 病弱な男の子がプランツ・ドールと過ごして元気をもらい……「流砂」で描かれるプランツ・ドールは、これまで以上に謎めいていました。「流砂」にしても、次の「“プレゼント”」にしても、プランツ・ドールが単なる人形ではなくまるで別次元の存在のようです。次の「珊瑚」にいたっては「アクアプラン虫」なる新種(新製品?)が登場。

 「ポプリ・ドール」には、下町を汚らわしく感じている金持の男が登場します。ほかの作品とは違い、プランツ・ドール自体が主人公と深くかかわるのではなく、プランツ・ドールを小道具として上手く利用した作品です。

 描かれた人間は必ず死ぬ――という怪奇小説のような画家が登場するのが「RAINY MOON」。画家の特異体質(?)とプランツ・ドールの特徴が結びつけられた意外な展開。暗くもなく明るくもなく、落ち着いた雰囲気の作品でした。

 「ミッシング・ドール」に登場する女性が、『ななめの音楽』のこゆるのような黒髪のストレートなのが印象的。祖母が育てていた行方不明のプランツ・ドールをどうしても探し出したいその女性は、その人形にそっくりな人形を見つけるが……。
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