『ミスター・ディアボロ』アントニー・レジューン/小林晋訳(扶桑社ミステリー)★★★☆☆

 『Mr. Diabolo』Anthony Lejeune,1960年。

 本書のミステリとしての魅力は訳者小林晋氏の解説に詳しい。

 トリックは古典も古典、密室の方は世界初の密室ミステリから、人間消失の方はもう一つの世界初の密室ミステリから、「間違った質問をした」というブレーズの言葉はブラウン神父のあれ……と、びっくりするくらいの超古典でした。

 あるものを指していると思われた言葉が別のものを指していた……というクリスティ好みの仕掛けの方が、個人的には面白かった。

 伏線は、あるにはあるけど、トリックが古典というのと同じ程度にしっかりした伏線。巧みに張り巡らされた伏線の数々にびっくり、というほどではない。

 全体的な感想は――あまりに何も起こらなさすぎです……。

 降霊会と悪魔の噂、悪魔の登場と消失、密室殺人――までが立て続けに起こって、それからがな〜。もうひとやまふたやまあってくれてもいいのに。

 こうしてみるとなるほどカーはうまい。誰かが「まさかそんなことが!」とか叫んだところで章が終わって、次の章では別の事件が起こったために「どんなことが」起こったのかは解決編までおあずけ、みたいな物語の転がし方がうまい。小説としてはわざとらしくて下手っぴいなのかもしれないけれど、盛り上げ方は上手なのです。

 西洋学研究学部の裏手を通る“悪魔の小道”。そこはかつて、一人の学生がシルクハットにマント姿の怪人と遭遇した末に首を吊ったという因縁の小道だった――。学会の夕食会の席上、この恐るべき逸話が披露された直後、伝説の“ミスター・ディアボロ”と思しき人影が中庭にたち現れる。“悪魔の小道”に飛び込んだ人影は、衆人環視のもと忽然と姿を消す。さらにその夜、密室状況で死体が発見され…。カー顔負けのけれん味と、華麗なロジックを兼ね備えた、知られざる60年代本格の逸品、遂に登場。(カバー裏あらすじより)
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