800字程度の怪談を集めたアンソロジー。bk1の投稿怪談の文豪版。
しばらくは読んだことのある作品やあまり好みではない作品が続く。なかではやはり入澤康夫「ユウレイノウタ」、宮沢賢治「鬼言(幻聴)最終形/鬼言(幻聴)先駆形」、井坂洋子「くの字」、西條八十「トミノの地獄」、稲垣足穂「追っかけられた話」、城左門「七十三枚の牌骨」、町田康「模様」、多田智満子「死刑執行」などの詩が飛び抜けていました。
片山廣子「うまれた家(抄)」は最近ちょっと好きな作家。
戦時中の書き下ろしアンソロジー『辻小説集』から何作か収録されており、なかでも小堀甚二「耳の塩漬」はこういう機会でもなければ一生読むことがなかったでしょう。「彼らは死に絶えても、彼らの耳だけは地上に残っていた」という一文が強烈です。
中国も怪談の宝庫。杜光庭/岡本綺堂訳「異姓」は知らなかったし怖かった。こういう理屈無用の暴力的な怪異は怖い。
いかにも定番のホラー、という感じの作品では吉田知子「手術室」が恐ろしい。
菊池寛「光遠の妹」は類話を『今昔物語集』で読んだことがあるので、その類の話をもとにした再話なのでしょう。再話(?)といえば押川春浪「米国の鉄道怪談」は、どう考えても日本の話でしょう(^_^;。出典が『万国幽霊怪話』なので、「万国」の数合わせなのかな。
穂村弘「超強力磁石」は、いかにもな〈怖い話〉と馬鹿馬鹿しいナンセンスをくっつけた怪作。これは著者にしか書けないんではないでしょうか。
そのほか幸田露伴「金銀」、泉鏡花「人妖」、水原紫苑「このゆふべ……」、内田百間「夜の杉(抄)」、芥川龍之介「凶(抄)」など。「凶」は『文芸怪談実話』で読んでいるはずなのだがすっかり忘れていました。
好評の「てのひら怪談」シリーズから飛び出した、800文字の新たな文学宇宙! 和漢の古典文学から、夏目漱石、泉鏡花らの文豪たち、さらには村上春樹、京極夏彦ら平成の人気作家にいたるまで――総勢100名にのぼる小説家、詩人、エッセイストの手になる妖しく不思議で奇妙な物語のカケラを蒐めた、極小にして極上のアンソロジー。(カバー裏あらすじより)
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