『幕末太陽傳』(1957年、日本)★★★★☆

 川島雄三監督。フランキー堺南田洋子菅井きん小沢昭一石原裕次郎二谷英明ほか出演。

 落語「居残り佐平次」をベースに映画化された時代劇喜劇。

 これはフランキー堺あっての映画というか、フランキー堺のための映画というか、とにかくフランキー堺の一人舞台。〈あば金〉役の小沢昭一と比べてもフランキー堺のうまさが際立ってました。落語口調のまま芝居を演じてそれを成功させるフランキー堺に対し、落語を芝居に置き換えて演じていた小沢昭一との違いとでも言いますか。

 佐平次ほか落語ネタをベースに、高杉晋作石原裕次郎)を初めとした維新志士たちの異人館焼き討ち計画をトッピング。で、この志士たちが「太陽族」だから『幕末太陽傳』らしいのだけれど、あんまり印象に残らんのです。時計も特に伏線になっているわけでもなく。

 それにひきかえ遊廓の人たちは生き生きとしています。トップ女郎こはるとおそめを演じるのは、南田洋子左幸子。鉄漿つけてて今見ても美人に見える人って初めて見ました。この二人と左平次(イノさん)のかけあいの息がぴったりで、どーでもいいようなやり取りでもこの人たちが出てくると見ているだけで楽しい。廊下や階段をあっち行ったりこっち行ったり、しなを作ったり、ちょっとした動作の一つ一つがよくできてます。岡田真澄があのバタ臭い顔を活かして「私は生粋の品川っ子です」を連発するのも可笑しかった。菅井きんは変わってないなあ。

 ちょっとびっくりしたのは、罪人引き回しの場面があるのだけれど、旗とかを持っている非人たちが、びっくりするくらい小汚いこと。今の映画じゃいかにも「わざと汚してます」という感じにしかならなそう。それと犬。雪の日に歩いている犬が、なんか、変なんです。体型も平べったいような寸胴で、歩き方も雪で歩きづらいのか怪我してるのか、ものすごくどんくさい。こういうとこも、すごい。
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