『メフィスト』2010年VOL.2

『夜と霧の誘拐』(第2回)笠井潔
 ――ソフィー誘拐犯の指示にしたがい、鞄を持ってパリを走り回るナディア。ジャン=ポールはちゃんと追いかけてくれているのだろうか? ナディアは建物の五階に上がり、ダストシュートから鞄を落とした。

 ×あらすじ×まんまと身代金を奪われた――と思った直後、ジャン=ポールが鞄を持った男を捕まえてきた。どうしてすぐに逃げずにぐずぐずしていたのだろう? 不審に思って問いただしたところ、「自分の子どもが誘拐されて仕方なく犯人の指示にしたがっただけだ」と男は弁明した。その日にジュール・メルレ誘拐事件があって誘拐班が出払っていたのは事実だった。ナディアはいったん警視庁に戻ったが、そこで誘拐の真犯人らしき男がソフィーに反撃されて射殺されたという報告がモガール警視のもとに届けられた。殺された真犯人の名はルドリュ。聖ジュヌヴィエーヴ学院長殺人事件の容疑者だった。誘拐と殺人どちらもルドリュの仕業なのだろうか? だがルドリュには不自然すぎるほど完璧な殺人のアリバイがあった。友人の生徒と接触したナディアは、学院に出没した幽霊と疾走した少女の噂を聞き出した。事件を聞いたカケルは、営利誘拐には二つの不等価交換が内在していると話し出す。そこに二重化とズレが畳みこまれている。今回の事件に照らせば、誘拐の裏に誘拐が、二つの誘拐の裏には殺人が……そして三つ目には、犯罪と犯罪の交換。「交換犯罪か」とモガール警視が呻いた。さらにナディアがカケルから聞き出したところでは、ルドリュの出版社から本を出していた男のなかに、イリイチらしき人物がいた形跡が……。×あらすじ終わり×
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