『日本霊異記 日本古典文学全集6』中田祝夫/校注・訳(小学館)

 仏教説話ということで読まず嫌いしていましたが、初めの三話くらいはあんまり説教臭くありませんでした。でもそのあとは案の定仏教臭の強い話が続く。しかもお経を読んでいたから助かった、というワンパターンが多い。

 月報の大野晋くらい読めると面白いんだろうな。でもその大野氏にしてからが、内容にではなく、国語学的に注目してたりする。

 上1、天皇に雷を捕まえられるか、と言われた小子部栖軽は。。。

 一休さんのとんちみたいな話かと思っていたのに、ほんとうに雷を捕まえてしまうとは。しかも「雷獣」でも「雷様」でもなく「雷」。シュールです。

 上2、狐の女房。犬が正体を見破るパターン。すでに子も出来ているし長年暮らして愛おしいので云々。

 上11、本書には地獄の火に焼かれる説話がいくつかあります。布教という点からみれば、言ってみれば脅しなわけで、やたらと残酷で怖い。

 上18、お経の一字を損じたため、その字を覚えられなくなった話。お経がらみではあるけれど、これは奇譚っぽい。

 中24、あっ、そうか。鬼は悪魔とは違うし、仏教の地獄はキリスト教の地獄とは違うんだ。鬼がお経で救われて、ちょっとびっくり。

 下6、僧の食べる魚が法華経に変わった――って、いくらなんでもすごい屁理屈だなァ。

 下27、どくろのたけのこを抜いてやると霊験が現れた話。これは有名な型でした。
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