織姫の七つの異名に基づく七つの連作短篇集。
いくつかの作品は史実を踏まえた歴史ミステリでもあります。すべてに共通しているのは、巫女の血を引く〈織姫〉の末裔たち。
まさか清少納言がそんな一族の人間だったとは(^_^;。『産霊山秘録』みたい。
初めの五篇は和歌をモチーフにしているのに、最後の一篇だけ俳句がモチーフなので、この作品だけいきなり江戸時代にひとっ飛び。結果的にそれまでの作品すべてがP.359の百池のモノローグにあるような価値観のズレを読者にもたらして、ミステリとしてちょっとした目くらましになっていました。
趣向がミステリっぽいのは、蜘蛛の糸の完全密室「ささがにの泉」、バラバラ殺人事件の捜査「糸織草子」。そのほか〈ある人物がおかしな行動を取ったのはなぜか?〉という謎と真相が見事な「梶葉襲」。和歌と朝顔と源氏物語がみごとにぴったり嵌っている「朝顔斎院」。どちらかというと、和歌と史実がうまく取り入れられていた初めの五篇が好みです。
秋去姫、朝顔姫、梶葉姫……、七つの異名を持った七夕伝説の織姫。神代の大王の怪死をめぐる幻想的な第一話から、江戸時代の禁忌の愛を描いた最終話まで、遙かなる時を隔てて女たちの甘美な罪が語られる。史実、和歌、人間ドラマという糸を縦横に組み合わせて描かれた、まさしく絢爛たる織物のような連作ミステリー!(カバー裏あらすじより)
---------------