『GOSICK5 ベルゼブブの頭蓋』桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)★★★☆☆

 またもや謎解きミステリ度は減ってしまいました。ミステリっていうより、完全に手品そのものだものなぁ。その分、戦争とか一族とか、大きなものが動き出してます。あの人とかあの人とか登場させちゃうんだ、という人たちまで登場しちゃいます。シリーズものとして、そういうのは最後まで取っとくべきなんじゃないのか、と余計なことを心配してしまいますが。

 でも考えてみると第二作の段階でさっさとヴィクトリカを取り巻く事情が明らかにされちゃってたし。固定された設定のなかでレギュラー陣が活躍するのを楽しむ――というタイプのシリーズ作品ではないんですよね。

 というわけで、今回は謎解きよりも、ヴィクトリカの一族の攻防、久城とヴィクトリカの絆……といった人間ドラマが進展した巻でした。

 個人的には本篇よりも「黒死病の仮面」が面白かった。第二の殺人の謎の怪人をもっともらしく見せるための布石なのですが、ここだけ他の部分と風合いが違って独立した短篇みたいでした。

 ところでこのシリーズはライトノベルというよりジュヴナイルですよね。

 夏の終わり、山間に位置する聖マルグリット学園を少し早い秋の訪れを感じさせる、涼しい風が吹き抜ける。それは、ある少女の不在を皆に告げているようでもあった――。

 学園から突如いなくなった金色の妖精・ヴィクトリカ――リトアニアに存在する〈ベルゼブブの頭蓋〉と呼ばれる修道院に軟禁され、生命の危機に瀕していると聞いた、東洋からの留学生・久城一弥は、自らヴィクトリカを迎えに行くことを申し出る。大きな力を持ちながらも、生きることに苦しんでいる小さな少女を助けるために。

 豪華大陸横断列車〈オールド・マスカレード〉で知り合った、奇妙な乗客たち。そして、ファンタスマゴリアと呼ばれる謎の夜会で巻き起こる殺人事件。徐々に大戦とそしてその裏側で進行する謎が明らかに。果たして、一弥はヴィクトリカを無事助け出すことができるのか? ゴシック・ミステリー第五弾!(カバー袖あらすじより)
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