『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午(講談社文庫)★★★★★

 実際に殺人をおこなって、その謎解きを出題する。という設定は衝撃的ですが、「現実の殺人で推理ゲームをする」という「フィクション」を読むのも、「現実の殺人というフィクション(=推理小説)」を読んで推理ゲームをするのも、「本を読んで謎解きを楽しむ」というレベルでは変わりないのかも。

 探偵たちのディスカッションというのは珍しくありませんが、本書の場合「ゲーム」という設定にしたために、現実の事件ではなく推理ゲームのルールに則って議論されているところが特徴です。つまり作中の議論が、探偵の推理であると同時に、読者に向けた「本格ミステリの読み方」指南にもなっていると言えなくもない。

 取り上げられているのは、連続殺人のミッシング・リンク、アリバイもののトラベル・ミステリー、バラバラ殺人と死体処理、日本−ベトナム間のアリバイ崩し、監視下での殺人、最後の殺人。

 短篇の連作だと考えれば、連作ものミステリの最高峰かもしれない。いろんなことが無理なく伏線や手がかりになってます。

 〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。 奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。 ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである……。リアル殺人ゲームの行き着く先は!? 歌野本格の粋を心して堪能せよ!(カバー裏あらすじより)
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