『ミステリマガジン』2011年2月号No.660【PLAYBOYが輝いていた頃】

 面白そうな特集ですが、実質的には異色作家特集でした。面白いから結果オーライですが。マイナーな作家の作品がもう一つくらいあってもよかったのに。ジーン・シェパードと小鷹氏の労作が★5つ。

レイ・ラッセル「これは本心からいうんだぞ」(And I Mean That Sincerely!,Ray Russell,1964,村上博基訳)は、「サルドニクス」「射手座」以外はあまりにもつまらない著者による、三番目に面白い作品でした。ただし怪奇ものではなく、業界内幕もの。映画プロデューサーは原作を見もしないなら脚本家も脚本家で、さらには原作者も……という、いつの時代のどこかの場所でも聞いたような話です。

ジーン・シェパード「Cで失神」(Lost in C,Jean Shepherd,1973,古屋美登里訳)は、「スカット・ファーカスと魔性のマライア」の著者による邦訳第2弾。解説の若島氏によると、いずれも「小説」ではないそうですが、いやいやいやいや(^_^;。学校の席順がアルファベット順であるため落ちこぼれることを定められたPやSやWたち。このままでは「C」すら覚束ずに落第の「F」になってしまうが……。邦題がうますぎる。

チャールズ・ボーモント「ホラー映画の恐怖」(The Horror of It All,Charles Beaumont,1958,柳下毅一郎訳)は、エッセイ。B級映画の味わいが伝わってくるようなエピソードが好きだなあ。

ジョン・コリア「お望みどおりに」(Asking for It,John Collier,1975,若島正訳)は、コリアですが落とし咄ではなく、細かい要素が全体に埋め込まれた作品でした。「殺されたい男を主人公にした小説を書きたいんだ」という印象的な導入から始まり、女の子を征服する夢を精神科医に分析され……。

・若島氏による作品解説のほか、小鷹さんの「私のアメリカ雑記帖(第7回)」でもメンズ・マガジンを特集。それでももう少し『PLAYBOY』そのものについての歴史や解説が欲しかった。
 

「迷宮解体新書(第38回)」は、ジェフリー・ディーヴァーがゲストのため、飛鳥部勝則のインタビューが白黒ページの普通のインタビュー記事にされてしまったとおぼしい。なんか、失礼というか、可哀相というか。。。

・翻訳者の鴻巣友季子による、マーガレット・アトウッドインタビュー掲載。

書評など
アヴラム・デイヴィッドスンエステルハージ博士の事件簿』、米澤穂信『折れた竜骨』、『ポストヒューマンSF傑作選』、『映画監督ジュリアン・デュヴィヴィエ』、『人生の奇跡 J・G・バラード自伝』、アメコミ『キック・アス』、ラノベ高木敦史『“菜々子さん"の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕』とその続編クリスティーナ・アギレラってとっくに有名じゃないのかな、と違和感を感じた映画『バーレスク』評。ミア・ファーローのフォロー・ミーってキャロル・リード監督だったんだ。そして初ソフト化なんだ。テレビではちょくちょく放映されている印象。トポルという俳優が印象に残ってる。

「ミステリ・ヴォイスUK」松下祥子(第38回 シャーロック) BBCで放映された現代版シャーロック・ホームズの話題。ベネディクト・カンバーバッチマーティン・フリーマン主演。
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