『ミステリの女王の冒険 視聴者への挑戦』エラリー・クイーン原案/飯城勇三編(論創社)★★★★☆

 ドラマ『エラリー・クイーン』の脚本集。『刑事コロンボ』の製作者が作ったドラマだということで、むしろわたしはそちらの方に食いついた口です。
 

「十二階特急の冒険」(The Adventure of the 12th Floor Express,1975放映)★★★★☆
 ――マナーズ社長が乗り込んだ専用エレベーターの十二階のボタンを、エレベーター係のフレッドが押した。十二階。受付のサリーはエレベーターの扉が開くのを見たが、なかは空っぽである。六階。エレベーターのなかで社長が倒れているのを見て、受付嬢は恐怖に喘いだ。

 クイーンお馴染みのあの趣向(ダイイング・メッセージ)を、途中まではあの趣向だと明らかにしないまま進める手際が見事でした。それというのも不可能状況の謎の方が強烈であるためで、しかもテレビならではの視覚的なアイデアも使われているところもミソ。それにしても「はっきりせん指紋があった」という一言が上手すぎます。
 

「黄金のこま犬の冒険」(The Adventure of the Chinese Dog,1975放映)★★★★☆
 ――エバハート保安官は、ライツヴィルの大富豪イーベン・ライトに呼び出された。結婚する娘への贈り物である黄金のこま犬像を警備してほしいという依頼だった。助手と共に見張りにつく保安官。だが家政婦の叫び声がし、駆けつけるとそこにはライトの死体が……。

 これは犯人を特定するのが比較的難しくありません。でも動機と凶器が不可分に結びついているところなど巧みです。好きになれそうもない人たちしか出てこないところが、新本格ミステリっぽい。
 

「奇妙なお茶会の冒険」(The Adventure of the Mad Tea Party,1975放映)★★★★☆
 ――エラリーの小説に舞台化の話が舞い込んだ。訪れたプロデューサー宅では、『アリス』のお茶会芝居の準備で真っ最中。ところが一夜明けるとプロデューサーの姿が消えてしまった。自ら姿を消したのか、誘拐されたのか、あるいはすでに死んでいるのか……?

 原作はあまり面白いとは感じなかったのですが、まったく別物のような面白さでした。具体的には巻末の解説に詳しい。エラリーのおこなった趣向が、それこそ『コロンボ』のようなこの手のドラマと相性がいいというのも一因でしょうか。
 

「慎重な証人の冒険」(The Adventure of the Wary Witness,1976放映)★★★☆☆
 ――エラリーの学友が殺人犯として起訴された。無実を証明してくれるはずの唯一の目撃者は、警察が必死で捜査したにもかかわらず見つからない。だが絶望したエラリーのもとに、一本の電話がかかってきた……。

 幻の女の正体と消えた理由をめぐる、いかにも推理小説じみた倒錯した論理が印象的な作品ですが、全体的にかなり地味です。ですが解説によると、犯人当てとしてはかなり評価が高いようです。
 

「ミステリの女王の冒険」(The Adventure of the Grand Old Lady,未放映)★★★☆☆
 ――クイーン・メリー号の乗客が刺殺された。「Kapitaire」という言葉を遺して……。直前には、誰かに追われているから銃を渡して欲しいと船員に頼み、さらに謎めいた電報を打っていた。エラリーは船の乗客のベテラン女流ミステリ作家とともに、事件を追う!

 ビショップは、急いでいただけなの……?(^_^;。見せネタがあからさますぎて美しくないけれど、クリスティ&クイーンの競演だけで得した気分。
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