『ロワイヤル通りの悪魔憑き ニコラ警視の事件3』ジャン=フランソワ・パロ/吉田恒雄訳(ランダムハウス講談社文庫)★★★☆☆

 『Le Fantôme de la rue Royale』Jean-François Parot,2001年。

 シリーズ第三弾。前作までのポンパドゥールのころから時代は飛んで、今の寵姫はデュ=バリー夫人、舞台は1770年です。

 マリー・アントワネットのお輿入れで、パリは盛り上がっている最中。このシリーズはミステリとして云々よりも、当時のフランスの様子を堪能できるところが魅力なのですが、本書では冒頭からご成婚の花火大会の混乱が描かれています。市当局の安全対策のでたらめっぷりから、花火の爆発をきっかけとする混乱の地獄絵図まで、ニコラの目を通して当夜の問題点が的確に明らかにされていました。

 そんな「事故」の大量死の現場で、ニコラは殺人による死体を発見してしまいます。

 被害者は商家ガレーヌ家の姪エロディー。ところが被害者の家族は、なぜか一様に言葉を濁してばかり。主人のシャルルも後妻のエミリーも悲しむ様子もなく、シャルルの姉シャルロットとカミーユは支離滅裂なことを口走るだけ、息子や召使いの態度もはっきりせず、エロディーに仕えるアメリカ・インディアン・ナガンダは脱走し、使用人のミエットは悪魔に憑かれたように叫び出し宙に浮かび……。

 本書のもう一つの見せ場は、このミエットの悪魔祓い《エクソシスト》の場面です。本筋に関係ないといえば関係ないのですが、やっぱり迫力がありました。

 事件はといえば、やがてエロディーの身体のことが明らかになり、そのことも含めて家族全員が何らかの秘密を抱えているために思うように捜査が進みません。まあ誰が犯人でもいいような話ではあるのですが。

 デュ=バリー夫人とショワズールの仲が悪いために、警察総監ド=サルティンの立場が前二作と比べて微妙なものに追い込まれていたりと、そういう事件や歴史の裏話的なことを描いている方が、著者の筆は冴えているように感じられます。ナガンダはこのあとも活躍しそうな書きぶりですね。

 1770年、パリの街は王太子マリー・アントワネットの成婚を祝う花火大会で大いなる賑わいを見せていた。だが、人と馬車が入り乱れるなか、悲劇が起こる。花火が暴発し、大混乱の末多くの人々が死傷したのだ。使命感に駆られた警視ニコラは惨劇のなかに身を投じる。そして、ある女性の死体に目を留めた。死体がこの惨劇によるものではないと気づいたニコラは調査を進めるが、悪魔に取り憑かれた奇妙な一家に出会い……。(カバー裏あらすじより)
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