ジェイムズ・モロウ「ヒロシマをめざしてのそのそと」(James Morrow,Shambling Towards Hiroshima,2009)は前・中・後の前編。スタージョン記念賞。第二次大戦中アメリカは、爬虫類を改造した生物兵器(怪獣)の開発に成功した。だが日本に圧力をかけるために作った小型版は不成功に終わってしまった。そこで怪獣役者の語り手に、着ぐるみに入ってもらって……、というおバカな設定が、今後どう展開してゆくのか楽しみ。
カレン・ジョイ・ファウラー「ペリカン・バー」(Karen Joy Fowler,The Perican Bar,2009)は、シャーリイ・ジャクスン賞&世界幻想文学大賞。矯正院のようなところに入れられたノラは、舎監ママ・ストロングから拷問のような仕打ちを受ける。悪いことをすればポイントを減らされ、いい子になれればポイントを与えられ、100ポイントになれば家に帰れる……。ノラからすべてを剥ぎ取りからっぽの人間にしようとするママ・ストロング、タイトルになっている「ペリカン・バー」を拠り所にしてそれに抵抗しようとするノラ。
ほかにピーター・ワッツ「島」、キジ・ジョンスン「孤船」。
「現代SF作家論シリーズ(2) アーサー・C・クラーク ハードSFとはどういうものか」金子隆一
「乱視読者の小説千一夜(3)ボーモントの七つの顔」若島正
---------------
『S-Fマガジン』2011年3月号
オンライン書店bk1で詳細を見る。
amazon.co.jp で詳細を見る。