『闇のなかの赤い馬』竹本健治(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

 聖ミレイユ学園で神の怒りとしか思えない悲劇があいついだ。ウォーレン神父は校庭の真ん中で落雷に遭って焼け死に、さらにベルイマン神父が密室と化したサンルームで、人体自然発火としか考えられない無残な焼死体となって発見されたのだ。「汎虚学研究会」はみんなからキョガクの連中とよばれる、ちょっと浮世離れしたメンバー四人で構成されている。部長は僕、室井環。中でも好奇心のかたまり、フクスケは女ホームズと化し、ワトソン役に僕を指名した。ベルイマン神父の死は殺人に違いないというのだ。僕は夜ごと見る、狂った赤い馬の悪夢でそれどころじゃないのだが……。(箱裏あらすじより)

 落雷死という衝撃的な死、人体自然発火としか思えないような焼死体、グロテスクな赤い馬の夢、かぎりなくおバカな真相など、派手なわりには普通の学園探偵ものっぽいノリとのギャップに、少し馴染めませんでした。実際、派手なところばかりが印象に残り、捜査や推理の探偵ごっこがあまり記憶に残りません。推理や捜査があってないがごときものでしかない(現実性のかけらもない可能性としてだけの推理や、怖くて調査できない語り手など)ので、せっかくの伏線が明かされたときのびっくり度が少なくて、もったいないなあと思ってしまいました。

 なぜわざわざそんな殺害方法なのかとか、なぜわざわざその絵なのかとか、細かいことをいうとあんまり必然性はなく(あるにしてもぎりぎりすぎる必然性)のですが、不気味かつグロテスクな効果をあげることにはかなり成功していました。ミステリとしての必然性はなくとも、馬が欲望のメタファーだとか、いろいろそういうのがあるんでしょうけれど。

 しかし考えてみると、(ネタバレ)復讐の方法としては意外といい方法かもしれません。全員が参加してなおかつ具体的に特定の誰かが手を下したわけでもない、というのは、復讐という目的にとっても、裏切りや露見を防ぐためにも、(ネタバレ終)かなり理想的かも?。

 語り手の感情や、フクスケの台詞だけでは、魔性属性がピンと来ませんでした。
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