「The Thing in the Forest」Bernard Capes

 ハンガリーにて。新妻のElspetは雪のなか家に帰る途中だった。夜も近づいていたので教会が見えたときにはほっとした。聖母像に祈りを捧げてから家に向かった。ところが視界に影のようなものが映った。振り返ると――狼だった。逃げ出したがすぐに追いつかれてしまい、恐怖におののき振り返ったところ、狼だろうか? 狼に決まっている。いや、人狼だった! だが、その表情に憐れみのようなものを感じたElspetは、肉を放ってやった。人外のものに同情するなど、もってのほかだった! ×××夫にも打ち明けられず、翌日、Elspetは教会に告白におもむいた。Father Ruhlに告白すると、返ってきたのは笑い声だった。ぞっとして顔を上げると、Ruhlの顔が狼に変わっていた。逃げ出したElspetのコートがつかまれ……二人を見つけたのは聖具係だった。Elspetは気を失っていたが無傷で、司祭は石像に押しつぶされていた。

 夏に向けて怪奇幻想系の作品を読もうと思い、人狼ものから一篇。でもこれは「森の怪」という題名で邦訳もあります。再度の怪のようなパターンに、信仰による救いを組み合わせた作品ですが、それよりも、化け物に親切にしてしまったことに罪の意識を感じるというElspetの心の持ちようが、これまでに読んだことのない感情で、興味深かったです。
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